マネジャー候補となる現場の中核層に焦点を 将来を切り拓く中堅社員の育て方・人材育成方法
中堅社員の現状(1)
弊社が、新人・若手・中堅それぞれ400人を対象にして2013年に実施した「新人・若手の意識と学習・キャリアに関する調査」をもとに、いくつかのデータを提示しつつ今の中堅社員像を見ていきたいと思います。

●主体的にキャリア形成をしたい中堅社員
今日の中堅社員は、自身のキャリア開発に高い関心を持っています。調査では、6割を超える人が「主体的にキャリア形成をしたいと思っている」と回答しています。
幼少期からずっと景気の低迷と経済激動のなかで過ごしてきた彼らは、たとえ無事に就職できても、自分のキャリアが安定的なものだとは思っていません。また、就職活動の時期に、「自分が本当にやりたいことをはっきりさせることが大事」だという教育を受けたため、「自分の本当にやりたいことを見つけて」「自分でキャリアをアップさせないといけない」といった考えの人が多いのも特徴です。
●仕事中心の生活には魅力を感じない中堅社員
キャリア形成に関心が高いとはいえ、仕事中心の生活になることを避けるのも、今日の中堅社員の特徴です。調査では、「仕事中心の生活に関する考え方」についても聞いていますが、「仕事中心の生活はいやだ」「仕事以外の生活を充実させたいので仕事はほどほどにしたい」「仕事は生計を立てるための手段と割り切っているのでほどほどにしたい」という3つが高い回答比率となっています。この結果からは、「仕事とは距離を置きたい」中堅社員像が見えてきます。
また、「働く上で重視すること」に関しては、「責任者として采配が振れる」「世間からもてはやされる」といった項目の重視度は相対的に低くなっており、どちらかといえば目立つよりも堅実に働きたいという意向が強いようです(図表3.)。このあたりの価値観が、企業側に「小粒化している」と感じさせる一因かもしれません。
●管理職にはなりたくない中堅社員
近未来の管理職の育成を図る上で大きな障害となりそうなのが、管理職志向の低下です。いずれの企業でも多かれ少なかれ耳にする問題ですが、調査(図表4.)では、新人→若手社員→中堅社員と企業のなかでの経験年数が長くなるにつれて、管理職になりたいと思う人の割合(「なりたい」「どちらかといえばなりたい」の合計)は低下する傾向が読み取れます。ただでさえ人数が少ない中堅社員がこうした状況では、将来、深刻なマネジメント不足が起こるかもしれません。
調査からは、主体的なキャリア形成への関心は高いものの、仕事はほどほどにしたい、目立ちたくない、管理職にはなりたくないといった中堅社員像が浮かび上がってきます。しかし、キャリアとは本来、仕事上で新たな役割や責任を引き受けていく過程のなかで形成されるものであることを考えれば、ここには矛盾があります。
この矛盾はどこからくるのでしょうか?
中堅社員に求められる役割と育成のポイントについてはこちらのコラムでもご紹介しております。