すでに起こっている未来と向き合う 「働き方」と「人材マネジメント」の変化
我々が向き合うべき「未来」とは?
人口減少とあわせて、高齢化もますます進展すると予測されています。そうなれば、年金・医療費・介護費などの社会保障費はますます増え、国の財政を圧迫するでしょう。日本の社会保障費は、厚生労働省の推計によれば2025年には2010年の約1.5倍になります。国の財政悪化とともに、年金の支給開始年齢の高齢化もしくは支給額の減額も予測されています。
これらの状況を踏まえると、働く期間が長期間化するのではないかと考えられます。つまり、60歳まで働いて老後ゆっくり過ごすというライフスタイルではなく、70歳あるいは75歳まで働き続けることが普通になるかもしれません。
現実的に考えて、50年間近くを全力で働き続けるのは難しいかもしれません。育児や介護などのライフイベントによるキャリアの中断だけでなく、病気によって休む、少し長い期間休んで充電する、ボランティアに精を出す、というような断続的なキャリア形成が一般的になるのかもしれません。
加えて、技術・知識の陳腐化のスピードが速まっていることを考慮すると、継続的な学びだけでなく、社会人が学校に戻って学び直すということが一般的になってくることも考えられます。
これらの「断続的なキャリア形成」「学び直し」を考えると、組織内外の垣根を低くしておくことが企業に求められます。言い換えれば、キャリアを中断したメンバーが復帰したとき、スムーズに受け入れることができるかどうか、ということがますます問われてくるといえるでしょう。
一般的に日本の企業組織は、同質性を好み、内外の垣根が高く、年次で管理しがちです。そのため、多様な働き方、多様なキャリアを歩んだ人々を受け入れていくことは、これからの課題になるでしょう。
また、個人としては、長期間働かざるをえない状況になったとき、果たして働く場所があるのかという問題があります。65歳への雇用延長に対して、企業としては諸手をあげて賛成ではなく、どちらかといえば渋々対応しがちな点を考慮すると、高齢者が働く場所をつくっていくことが社会として課題になっていくでしょう。
高齢化は、企業の内部でも起こっています。特に大企業においては、バブル大量採用組が中高年に差しかかっている状況に対して、ポストや金銭的報酬で報えなくなってきています。むしろ、給料に比して、活躍していない中高年層が目立つ企業も多くなってきています。そのような中高年層を活性化していくこととともに、組織外へ流動させていくことも求められるでしょう。
いわゆる「中高年の雇用の流動化」の問題ですが、うまく流動化することができれば、送り出し企業、受け入れ側の企業、中高年本人にとってそれぞれにとってメリットがあります。この三者が満足できるようなシステムをつくることも社会としての課題といえるでしょう。
ここまでをまとめると、国内の人口減少と高齢化の進展によって、「国内売上の減少」「グローバル化の加速」「労働の長期間化」が未来の論点といえるでしょう。詳細を下表(図表.3)にまとめます。
図表.3 我々が向き合うべき「未来」の論点

これらのような「働き方」に関する大きな動きに対して、企業はどのような人材マネジメントを考えていけばいいのでしょうか?