将来の組織や人材への展望について見えたモノ 最新調査報告 これからの人材マネジメントへのヒント
動機づけ要因は、多様な働き方?
選択率が最も高いのは、「仕事のやりがい」(現在89.5%、2025年頃76.6%)でした。それに続くのは、現在を対象にした場合、「自分の成長の実感」(現在57.3%、2025年頃46.0%)です。いずれも選択率は高いですが、今後は重要性が低下すると考えられているようです。
図表6. 従業員を動機づけるもの

※出典:『今後の人材マネジメントに関する調査』
同様に、2025年頃に「動機づけ」の要因として重要性が低下すると考えられているものは、「自分の成長の実感」に加え、「社内の人間関係の良さ」(現在33.9%、2025年頃15.3%)、「高い給与」(現在23.4%、2025年頃15.3%)、「出世や昇進」(現在16.9%、2025年頃5.6%)です。
反面、現在に比べて2025年頃に重要度が特に高まると考えられている要因があります。それは、「多様な働き方の選択」(現在3.2%、2025年頃48.4%)です。
2025年頃、「多様な働き方の選択」が動機づけのために重要になるという認識には、大きく2つの背景があると考えられます。
一つは、「働く期間の長期化」です。
今後段階的に年金支給年齢が後ろ倒しになり65歳、またはそれ以上の年齢になるまで、より多くの人々がより長い期間働くようになると考えられます。そのような場合、出産や介護といったライフイベントに直面する人はますます増えます。また、長く働くためには環境変化に対応すべく、新たなことを学ぶこと、または継続的に学び直しをすることも求められるようになります。
このような状況を想定し、ライフステージに応じて働き方を選べることが、個人に対する動機づけ要因として重要になる認識がされているのではないでしょうか。
もう一つは、「成長パラダイムに基づくインセンティブが保障できない」ことです。
日本の人口が減少し、それに伴い事業規模が縮小した場合、高い給与や、ポストを伴う出世を保障することは、企業にとって現在以上に難しくなると考えられているのではないでしょうか。また、事業の成長と個人の成長が重なり「やりがいや成長感を感じる」機会も、今後は減ってしまうと考えられているのかもしれません。
結果として、それらに代わるものとして、必ずしも積極的な理由のみからではなく、「多様な働き方の選択」を今後動機づけ要因にせざるを得ないと認識されているのかもしれません。
このように「多様な働き方の選択」が動機づけのために今後ますます重要になるだろうという見通しの背景には、このような「悩ましい」将来に対する予測が見え隠れします。
このほかにも変化し続ける環境に呼応して、企業の経営課題、また人材マネジメント課題は変化を続けていきます。本報告が、皆様が今後の人材マネジメントのあり様について考える一つの参考になれば幸いです。