人材開発トレーナーがリアルな新入社員像を語る あたりまえの一歩手前から。 〜新入社員研修の出発点と今〜

執筆者情報
人材開発トレーナー
足立 美穂

新入社員の早期育成が叫ばれています。どうしたら新人が少しでも早く職場に溶け込み、活躍できるようになるか、悩んでいる人事担当者も多いのではないでしょうか。そこで今回は弊社の新入社員向け研修である『8つの基本行動』の開発スタッフでもあり、研修現場でも活躍中のトレーナーから、リアルな新入社員像を語ってもらいます。


本当に必要な新入社員研修は、本当の新入社員を知ることから。

『8つの基本行動』はサービス開始に向けたプログラム開発を2002年からスタートさせましたが、この研修が生まれた背景には人事と現場、そして新入社員それぞれからのニーズがあったように思います。
現場からよく出てくる声としては「電話に出ないし、挨拶もない。ビジネスマナーが全然なってない。なんであんな使えないヤツを送ってくるんだ。もっと基本的なことをきちんとできるようにしてほしい」というものです。しかし、一生懸命に採用して現場に送り出してきた人事としてみれば、「面接の時にはできていたのにおかしい」ということになります。一方、研修を受ける当事者である新入社員サイドからの要望もありました。 実は『8つの基本行動』ができる前から、新入社員導入研修としてお客様にご提供している別のプログラムがあり、今もご好評をいただいているのですが、そこに参加した受講者からは「電話応対は時間をもっとかけてほしかった」「マナーの基本的な動作をいろんなパターンで練習したかった」といったような声が増えていました。
これらのニーズを受けての開発でした。まず前提にしたのは、新入社員が私たちが思っている以上に不安な状況で4月を迎えているということです。 例えば、電話応対に自信のない新入社員は非常に多いという点です。私たちの世代は、親から「電話は出るもの」と言われて続けてきて、電話で悩むことなんてまずなかったと思います。
でも今の人たちは、番号通知システムなどの影響で、見知らぬ人からの電話をとったことがほとんどないんじゃないでしょうか。見知らぬ人と電話で話すことに自信が無くて、周りにそれを聞かれるのが怖い。だから自分のデスクで電話するのが嫌で、会議室に行って電話をかけていたりする。彼らにとっては「たかが電話」ではなく、悩みは切実です。
私たちがあたりまえだと考えている基本行動やビジネスマナーの一歩手前から、一つずつ身に付けることができる研修にした方がいいんじゃないか。そういう視点に立って、『8つの基本行動』を組み立てていきました。トライアルで実施した時から手応えはありましたね。「こんな細かいところまでやるのかと思っていたけれど、やってみたらすごく自信がつきました」「迷いが整理できました」「気持ちが楽になりました」そんな声を多く聞くことができ、この研修が今の時代に求められていて、かつ、お役に立てるという実感を持てました。

相手の期待を考えることで、自分を考える。そして、同世代のリアリティ。

『8つの基本行動』では、2日間かけてビジネスパーソンとして職場で必要とされる基本を理解し、実践できるようにしていきます。挨拶から始まり、自己紹介、電話応対、仕事の受け方・指示・報告、お客様のお出迎えと訪問、それらをまとめた総合演習というプロセスで進んでいきます。この研修で一番大切にしているのは、常に相手の期待を考えるということです。VTRを見る際も、ロールプレイングを行う際もその点を意識していくようにしています。
例えば、ロールプレイングではメンバーが交代で新入社員や上司を演じながらいろんな観点でお互いをチェックしていきます。「あいさつって、声が届かないと意味ないよね」「それ、かっこいいと思っているかもしれないけど、相当感じ悪いぜ」「ずっと頷いているのはいいんだけど、メモ取ってないと上司は不安なんじゃないかな」「報告が長すぎるんじゃないの? これだったら紙にまとめてほしいなぁ」…。相手の期待を考えることで、自分のことがわかってくるんですね。自分ではできていたつもりができていなかったとか。逆に普段の生活の中にヒントってあるんだなとか、今までの体験や就職活動でやっていたことも役立つぞとか。新入社員研修は模範的なことを覚える修練、ビジネスマナーを暗記する場という意識で参加される人も多いのですが、相手の期待を考えるという視点に立つとスッと入ってくるみたいですね。「あ、難しいことじゃないんだ」って。
それから、この研修では、お互いに2日間の中でどんどん意見やアドバイスを交換します。人事の方からはよく「遠慮なくビジビシ鍛えてくださいね」と言われるのですが、トレーナーからのメッセージを吸収するよりも、同世代でフィードバックしあう方が、吸収が速い。また、フィードバックしながら、自分のことも見つめています。そういえば今年の公開コースで、メンバーの一人が2日目に大遅刻をしたんですね。トレーナーとしてちょっと注意しとこうかなと言葉が出かかった時に、他のメンバーから「相手の期待を考えたら、早起きして来てよ」っていう発言がありました。その発言を、遅刻したメンバーが素直に受け止めて、反省していました。「もう遅刻しません」って。
わずか2日間の研修ですが、受講生の皆さんはこんなに変わるのかというくらい変わります。いろいろと抱えている悩みが解消して、どんどん表情が晴れていく。それが態度に表れ、目にも見える。「昨日はなんだか頼りなさそうに見えたのに、今日の朝、元気に挨拶してくれましたよ。どうしたんですか?」なんて会場の方がびっくりするくらいです。

年齢は離れていっても、気持ちだけは離れずにいたい。

私がトレーナーになったのは2001年。その頃弊社の研修はマネジメント領域がほとんどで、私が活躍する領域はあまりないだろうといわれていました。
私も、まあのんびり、ゆっくりやっていこうかなと思っていました。そんな私が今は忙しくて、休みをとるのが難しいくらいです。そこには多くの企業が若手社員を対象にした教育研修に力を入れるようになったという背景があります。現在は継続的にお付き合いさせていただいたり、新人から若手へのフォローの仕組みをお手伝いしたり、上司や先輩を巻き込む研修を企画したり、単発ではなく長期的な視点で新人からの育成に向き合う機会も増えてきました。また、今は通年の採用という企業もあり、春だけでなく一年中、新入社員研修を担当しています。

トレーナーという仕事を通して若い世代と触れ合って思うのは、彼らはみんな必死で一生懸命だということです。以前と比べて任せられる業務は格段に幅広くなり、求められる役割はどんどん多くなって、疲労感や負担感を感じている暇もないくらいの速いスピードでの成長を求められています。実際、彼らの吸収力の速さと成長していくスピードには驚かされます。でも、そこのところを本人たちは明確に意識していない場合が多い。そんな彼らの成長感をつかんでいることが、トレーナーの役割としてはとても大切だと思っています。彼らが自分の成長を確かめられる、次の成長へのきっかけを見つけることができる、これからもそういう時間を提供できたらと思っています。

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