吉田達『過去の経験とトレーナーの仕事がシンクロし、また新たな挑戦が始まる』

人生の後半をどう過ごすか

私は、45歳でトレーナーに転身したのですが、それまでの22年間は銀行に勤めていました。
若い頃は金融商品の開発を任され、優秀な先輩や同僚に恵まれた環境で、新しい金融技術の導入を面白がってやっていました。一方、バブルの膨張と崩壊の過程を本部スタッフとして経験したことで、単に目新しい、技術的に面白い、という理由だけで商品開発に取り組んではいけない、という自戒の念が残りました。そのあとは、金融業を通して世の中の課題を解決するとはどういうことかを考え、銀行内部で働きかけるとともに、NPOバンクの活動にも携わるようになりました。
加えて、40歳前後から「人生の後半をどう過ごすか」ということを考え続けていました。バブル崩壊以降の金融再編で、各行が生き残りをかけるなか、先々の見通しは厳しく、「50歳を超えると関係会社に移り、そこで要職を務めて、60歳過ぎて退職金と年金で悠々自適に暮らす」という過去一般的だったシナリオは無理だろうと感じていました。「そもそもそんな働き方面白いだろうか」という気持ちも強くありました。では転職するとして、経歴上、おのずと候補は金融業界が中心になる。でも金融業界でずっとやっていきたいという想いもない。
考えた末に、組織に頼るのではなく、自分の強みが生かせる領域で、その道のプロになりたい。周りも期待してくれるなか、年齢にとらわれず働いていきたい、と思い至りました。
当時45歳。キャリアチェンジするとしたら、もうこれが最後のタイミングだろうなと思いました。転身の決断を振り返ると、迷うことなく、「自分は良い選択をした」と断言できます。もちろん、思うようにいかず悩んだ時期もありましたが、明らかに人生が豊かになったと思っています。

トレーナーとして経験・技術を磨く

トレーナーになってから、一時期、リクルートマネジメントソリューションズのあらゆる研修プログラムを標準どおり運営できるようになろうと努力しました。どのプログラムもよく作られているので、このようにアプローチすれば、確実にこれが起きるということをきちんと掴んで、それを高いレベルで実現するということを目指したのです。そのプロセスを経て、さらに研修の状況に応じて適切な変更や対応ができるようになりました。
徐々に固定客とも言える企業様が増え、大体その年のはじめには1年後のスケジュールが埋まっている、という状態になりました。それはそれで有難かったのですが、ある大手メーカーで経営人材育成というテーマの案件を担当し、新たな転機が訪れました。

事業を通じて世の中の課題を解決するために、
トレーナーとして出来ること

その企業では、経営幹部候補である受講者に新規事業立案の課題を出すのですが、多くの受講者が「世の中にない新しいもの」を考えようとします。そのようななかで私は、受講者に対し「その事業は、次の世代に対してどういう未来を約束するものか」をこだわり持って問い続けました。とてもインパクトがあったようで、社長からの評価はもとより、受講者の中にも「シンガポールに出向後も、ずっと、研修でもらった言葉を記憶に刻んでいます」と、わざわざレターを下さる方もいました。
あとから振り返ると、私がその問いかけを繰り返した背景には、銀行員時代に考え続けた「事業を通じて世の中の課題を解決する」という自身のテーマがありました。トレーナーに転身し、いわゆる人材開発やファシリテーションなどの技術を高めることに力を注いできたのですが、ちょうど60歳前後になって、トレーナーとして磨いてきた経験・技術と銀行員時代のテーマが、「経営人材育成」という領域で統合され始めたように感じました。
この種のテーマについては、目的や受講者に応じて、いくつかの既存標準プログラムを組み合わせて研修を提供してきたのですが、この領域に特化した専用の標準プログラムを開発したいと思うようになりました。そして今、私自身が「経営人材育成」という領域に特化したトレーナーとして、リクルートマネジメントソリューションズとともにプログラム開発やコンサルティングに携わりながら、研修の提供を行っています。トレーナーとして研鑽を続けた先で、別軸と考えていた過去の経験がシンクロし、60歳を過ぎても新しい挑戦に繋がっていくとは思いもしませんでしたが、面白い人生だなと楽しんでいます。

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