上村敏之『いつまでも未熟だと言い続けながら、成長を追い求めていきたい』

きっかけは、研修の価値を体感したこと

私は、大学院で有機化学を学び、製薬会社の研究所に入りました。いわゆる理系の研究職です。当時、会社で受けた研修は、レクチャー形式がほとんど。例えば、コミュニケーションに関する研修だと、様々な方法を紹介され、「これを憶えておけばできる」と教えられる。一方的で、つまらないし、やる気も出ません。こんな研修に出るくらいならば、好きな研究に時間を割きたいと思っていました。研修は本当に大嫌いでした。
そんな私が、研究開発部門の人事グループに異動となりました。最初は採用を任されていたのですが、ある時「ちょっとこの研修に行ってみて」と、本社の人事に依頼されました。それがたまたま、リクルートコミュニケーションエンジニアリング(※リクルートマネジメントソリューションズ子会社)の研修でした。
その研修の中で、「研究が大好きだったのに、急に人事に異動になって不満はありませんか?」と他の受講者から問いかけられました。私は、「いや、自分自身が研究を好きだからこそ、周りの人が研究に打ち込める環境を整えたい。そのための人事だと理解して、納得して、できることは全部したいと思っている」と、初めて自分の気持ちを整理しながら言葉にしました。人事に異動したばかりで、自信もなく手探り状態だった中、受講者の仲間から「うちにも、そんな人事担当者が欲しい」「とりあえず、その思いを大事にしてやっていけば大丈夫だよ」と言ってもらえたことで勇気づけられました。
皆さんの言葉に後押しされて、帰宅後すぐに新たな人事施策に関する提案書の作成に取り掛かりました。そして後日、上司にその提案書を出しました。研修を受けて、自分の現在地や大切な価値観がはっきりし、やるべきことが明確になったのです。このとき、初めて「研修って、意味あるものなんだ」と気づきました。この経験から、自ら手を挙げて研修担当になり、研修制度の見直しに夢中になりました。

成長実感を得られる仕事を求めて

その後、本社経営企画部へ異動し、事業企画を担当することになりました。業務を通じて、会社の数字が分かるようになり、周囲からも頑張っていると言われたのですが、自分の中で成長実感が得られなくなっていました。今思うと、成長したいと思う方向性と与えられる仕事内容にズレが起きていたのかもしれません。しかし、会社の理念には強く共感していましたし、仲間との関係は良好だったので、わざわざ他社に転職して似たような仕事をする気にもなれませんでした。そんなモヤモヤを抱えたなかで出会ったのがトレーナーの求人です。「こんな仕事ができるなら、絶対に夢中になれる。間違いなく成長できる」と感じました。一方で人材紹介会社の担当者から、「難関です」と聞いていたので、ダメ元での挑戦でした。
妻は私のキャリアチェンジに不安を感じていました。しかし一方的に反対せず、妻なりに情報を集めて考えてくれていたようです。たまたま私が最終面接を受けていた日に、あるドキュメント番組で、人生を賭けて人材教育に取り組んでいる方の特集を目にし、「あなたが転職してやろうとしていることは間違っていないと思う」と言って、最後には応援をしてくれました。

「目の前の人たちの役に立つことが出来る」という実感

私が人生のなかで大事にしているキーワードは「成長」です。何歳になっても、「何かしら、新しいことに挑戦していたい」「ずーっと、自分は未熟(成長過程)だって言い続けたい」と思っています。娘に対しても、一生懸命何かに取り組んでいる姿を見せ続けたい。60歳になっても、70歳になっても、ずっと何かを吸収しようと勉強し続けたい。トレーナーはそれができる仕事だと思っています。
前職で経験した研究・人事・経営企画、どれと比べても、トレーナーの仕事が一番難しいと感じます。正直言えば、不安だらけです。私にとって一番の不安は、研修は毎回知らない人たちと仕事をしなければいけないという点です。会社員時代は何か新しいチャレンジをするにも、周囲の力を借りれば、どうにかなってしまう部分がありました。しかし、研修の場は自分ひとりで、完全に初対面の人たちと「おはようございます」の挨拶から始めて、人間関係を構築し、同じねらいを共有して、一緒になって組み上げていかなければならない。これが、とんでもなく難しい。ただ不思議なことに、前職時代はこのぐらいの不安を抱えると、ストレスで足が痺れたり、円形脱毛ができたり、体に異常が起きていたのに、今はまったくそういったことがないんです。おそらく、不安はあるけれど、ストレスではないんでしょうね。
これは「確実に自分が成長している」「目の前の人たちの役に立つことが出来る」という実感が持てているからだと思います。いまは、誰に聞かれても、「とても難しい仕事ですが、やりがいを感じて確実に成長しています」と答えられます。そんな自信を持ちつつ、未熟ゆえの不安感を抱き続けることが、私にはとても心地よいのだと思います。

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