山脇昌子『誰かのために、頭も心も体も全部使い切る』

くも膜下出血で倒れ、がらりと変わった人生観

私は、外資系企業で必死にマネジメントに取り組みながらキャリアを積んできました。当時はとにかく、子供を育てるために稼がなきゃと、目の前のことに必死で働いていました。しかし、くも膜下出血で倒れ、人生観ががらりと変わったのです。「人ってあっけなく死ぬものなんだ」。そう実感してから、「自分の命を何に使うか」を真剣に考えるようになりました。
子供への向き合い方も見直そうと、大学生の息子に「お母さんってどんな人?」と尋ねたことがあります。もしかしたら、「自分のことに必死で、あまり自分に構ってくれなかった人」などと言われるかもしれないと思っていました。しかし、こたえは意外なものでした。「お母さんは、いつも人のために何かをやってきた人。僕たちや部下の人たちのために、何ができるか必死に考えて、ひたすら踏ん張ってたよね」。息子はそんな風に見てくれていたのかと驚きました。確かに、お金のためだけであれば、もっと容易い仕事や会社もあったと思います。「誰かのために」と思えたとき、底力を発揮し、充実感を味わう自分に気がつきました。
あらためて、残りの人生で何がやりたいのだろうと考えた際に、目の前の誰かを支援する仕事がしたいと思いました。では、どうやったらその仕事ができるのか?大病を経験して、人の持つ財産は、知識や考え方だと思い至りました。お金は尽きる。でも知識や考え方は尽きない。誰もそれを奪えないし、生かすことで人生は有意義なものになる。特に、「考え」が定まっていると、人のパフォーマンスが大きく高まります。小手先のノウハウでもなく、どんなところでも自信をもって自分自身を発揮することができるもの。それを磨くお手伝いをしたい。キャリアコンサルタントの仕事を経験してみたものの、1対1の対応では限界がある。もし企業のマネジャー層に貢献できたら、社会に広く伝播するはずだ、そんな想いをもってトレーナーにキャリアチェンジしました。

苦しい中でも私が頑張れた理由

会社員時代、私がいた会社はファンドに買収されたことで経営層が変わり、大幅なコスト削減を求められました。理不尽な要求も多く突きつけられました。それでも与えられた目標を達成しなければ、自分の家族はもちろん、部下や部下の家族も守れないという状況に追い込まれたのです。自分のマネジメントは正しいのか?方向性に間違いは無いか?眠れぬほど不安を抱えました。それゆえ、当時マネジメントの仕事は、苦しいことばかりだと思い込んでいました。
しかし、本当に苦しいだけだったのか?当時のメンバーはそれぞれ別々の道を歩んでいるものの、何かとよく集まるのですが、思い出話をするたびに、私は彼・彼女らがいたからこそ頑張れたのだと再認識します。本当に厳しい状況下に追い込まれ、自分が彼・彼女らを守ると意気込んでいたのですが、実際は彼・彼女らのおかげで頑張ることができた。私は絶対に、一人では頑張りきれなかった。最後は仲間が支えてくれた――恥ずかしながら、そんなことに気づけたのは最近になってからです。

受講者の「大事にしていること」や「仕事のやりがい」とマネジメントをつなげていきたい。

目の前のことに追われると大事なことを見失うのは、私だけではないと感じます。多かれ少なかれ、研修の場で会う受講者の皆さんも同じ。特に苦しんでいる人ほど、視野が狭まって目先のことに囚われ、自信さえ失っている。そんな時、一方的に何かを伝えようとしても、受講者の心には響かない。相手に合わせて、たとえば、悩んでいた頃の自分と似た方なら、「それでいいんだよ」と伝えたい。たった一言でも、小さな自信や安心が生まれ、次の一歩につながるはずです。そのうえで、皆さんが「大事にしていること」や「仕事のやりがい」とマネジメントをつなげていきたい。それがマネジャーの役割を果たす上で大きな財産になります。
トレーナーの仕事は決して楽ではありませんが、誰かのために、頭も心も体も全部使い切る。「生きてる」という実感が、たまらなく幸せな仕事です。

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