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『ダイバシティ・マネジメント 多様性をいかす組織』 |
研究員:入江崇介
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近年、企業経営において急速に広がりつつあるトピックのひとつに「ダイバシティ」がある。本書は、そのダイバシティをパフォーマンスに結びつける「マネジメント」について、本邦における第一人者のひとりである谷口真美氏により、理論と具体的なケースを元に体系化された書である。「ダイバシティとは何か?」を正しく理解したい方、ダイバシティを企業のパフォーマンスにつなげたい方など、ダイバシティに興味のある万人にとってヒントになることが多く、推薦したい。
おすすめのポイント
本書の特徴のひとつは、著者が膨大な先行研究をレビューし、それを改めて体系化していることである。それにより、読者も研究の流れを追体験することができ、ともすれば起こりがちな読者のダイバシティ、そしてダイバシティ・マネジメントについての誤解や認識不足を解消するきっかけを得ることができる。
たとえば、近年よく耳にする「女性活用/活躍」というキーワードこそがダイバシティ・マネジメントだと誤解されている方もいらっしゃるのではないだろうか?実際には、どの職場であっても避けられない年齢の違いもダイバシティのテーマのひとつである。また、グローバル化の流れに必然的にともなうさまざまな国の人々とのコラボレーションもまたダイバシティのテーマのひとつである。
では、「企業にとってのダイバシティ」とはこのような人口学的で「表層」的な観点のみの多様性をさすのか?そうではない。実際には、目に見ることができない価値観など「深層」のダイバシティも存在する。むしろ、個性を持った個人が集合する組織においては、この価値観のダイバシティは程度の差こそあれ絶対的に存在するものである。実際のダイバシティ・マネジメントの上では表層・深層の双方のダイバシティとも重要なテーマになる。本書は、このような「ダイバシティ」についての正しい視界をあらためて提供してくれる。
また、「ダイバシティが必ずポジティブな成果につながるとは限らない」ことも改めて意識することが重要である。人事施策や組織開発・変革は、ともすれば成果に結びつきにくいかのように語られることがあるが、「何のために」「どのような」施策を行うかが、その成否を本質的に判断するためには重要である。たとえば、拡散的プロセスであるアイデアの発想を行う場面ではダイバシティが組織に対してポジティブな影響を与えても、収束的プロセスであるアイデアの実行の場面では逆にネガティブな影響を与えることがあるという例が、本書にも実証研究を元にあげられている。
本書ではこのように、「ダイバシティ」とその「マネジメント」について学術的な研究とイオン・マツダなどを対象にした実際の企業でのダイバシティ・マネジメントのケースを組み合わせ、実務的な示唆もビビッドに描かれている。
「フラット化する世界」でパフォーマンスをあげるひとつの鍵としてのダイバシティ・マネジメントについて知識を得るための第一歩として、理論だけでなく具体的な事例も記されている本書を読むことは有益である。ダイバシティをテコとした人材開発、そして組織開発・変革を推進しようとされている方にはぜひご一読いただきたい。
