「伝える力」がますます求められるようになった今日… さあ、「伝え上手」になろう。 〜長引く会議、分かりづらいメールに別れを告げる〜

執筆者情報
株式会社 パンネーションズ コンサルティング グループ 代表取締役・早稲田大学理工学術院非常勤講師
安田 正

ビジネスの進め方が多様化してきた今日、コミュニケーションの基本である「伝える力」がますます求められるようになっています。しかし、その必要性を頭では理解していても、実践できない人がまだまだ多いのも現実です。弊社が提供する『アカウンタビリティシリーズ』(アカウンタビリティロジカルコミュニケーション研修/ロジカルライティング研修)は、自分の考えを論理的にまとめ、分かりやすく伝えたいというニーズにお応えする研修です。日本人の特性を踏まえた、日本人のためのビジネススキル研修として好評を博しています。今回のコラムでは、この研修プログラムの開発者であり、株式会社パンネーションズコンサルティンググループ代表取締役を勤める安田正氏のお話をご紹介します。


日本人型コミュニケーションの限界

「プレゼンテーションがうまくいかない」「会議で言いたいことがうまく伝わらない」「外国人との意思疎通ができない」……、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか? 実はこれらの悩みには共通の原因があります。それは自分が伝えたいことを相手に分りやすく伝える方法を学んでいないということです。多民族国家でお互いに価値観も文化も異なる環境が当たり前の欧米社会では、自分の考えや気持ちは、言葉を使って分かりやすく伝えないと理解してもらえないことを前提としているので、子どもの頃から、日々伝える技術を学んでいます。
しかし日本の場合は、欧米諸国と比べると価値観も文化背景も互いにかなり近しい環境にあります。前提情報などの細かい説明をしなくても、互いに伝えたいことをなんとなく察することができる、いわゆる「あうんの呼吸」で通じてしまうので、伝える技術を学ぶ必要がなかったのです。
例えば、子どもが親に「お菓子を買って!」とねだったとします。欧米の子育てでは、親はお菓子をねだった子どもに対して、「Why?」と尋ねるのだそうです。そのことで、子どもは、自分がお菓子を欲しい理由を親にきちんと伝えないと、お菓子を手に入れることはできないのだということを知るのです。しかし、日本の親は「また今度ね」などとあいまいに濁すことが多いのではないでしょうか。子どもは「どうしても欲しい」と駄々をこねることもありますが、たいていはそれでも買ってもらえず、状況を察して我慢します。つまり、親の顔色・声色から状況を察することは求められても、「なぜ欲しいのか」という説明をすることは求められないのです。このように、日本の文化と欧米の文化では、「伝える」ことへの意識や「伝える」スキルの開発に大きな差が生じているのです。

日本でも、ビジネスのシーンではこうしたコミュニケーションは通用しなくなってきています。例えば、社内外の人たちを巻き込んだプロジェクトで、初対面の状態から短時間でアウトプットを出さなくてはならないような場合、あるいは外国人と仕事をするような場合には、自分の考えていることを、誰もが分かるようにきちんと説明することが必要となります。しかし、前述したように日本人は「相手が分かるように伝える」ことをあまり意識しない傾向があります。そのためにさまざまなビジネスシーンでコミュニケーションロスが生じ、「なんで伝わらないんだ」とカリカリしているのが今の状況ではないでしょうか。私たちが提供している『アカウンタビリティシリーズ』が注目を集めているのは、このように日本のビジネスコミュニケーションの形が変わり、誰もがそのあり方を模索するようになったからなのかもしれません。

「設計図」を見直せば、あなたの話はもっと「伝わる」

私は、話し上手とは元々の才能ではなく、トレーニング次第で確実に高めることができるものだと考えています。しかし多くの日本人は勘違いをしています。例えば、話し上手というとお笑い芸人をイメージする人がいることもその一例です。そして、自分には面白い話をする才能がないのだと、あきらめている人がいます。でも、話の面白い人=伝え上手とは限りません。ビジネス上必要とされるのは多くの場合、面白い話し方よりは正確な伝え方です。そこで私たちがご提案しているのは、どんな話し下手な人でも、ルールと設計図さえマスターすれば相手に理解されやすい論理的な話し方=伝え上手に変わる方法です。この方法を、アウトライン化といいます。

アウトライン化とは、世界共通の情報整理の方法です。話すにせよ、書くにせよ、物事を誰に対してもわかりやすく伝えることができる人は、頭の中でアウトライン化を行っているのです。このアウトライン化とは、いわば話の「設計図」を作るようなものです。「設計図」を描くということは、話の要点を整理することではあるのですが、単に整理するのではなく、話す内容は相手が聞きたいことか、話す順番は聞きたい人が求める順番か、ということを常に確認しながら描いていきます。そして、話す際には、最初にその設計図にそって何を話すか「予告」をします。それによって、聞き手はその後の話の設計を想定でき、話を楽に聞くことができるのです。
『アカウンタビリティシリーズ』研修では、こういった決まりごとを知り、話したり書いたりするための設計図を習得していただくことを目的としています。また、私たちの研修は欧米の手法をそのまま持ってくるのではなく、日本人の特性に合った工夫を取り入れているのが特徴です。例えば『ロジカルコミュニケーション研修』では、日本人のビジネスパーソンに起こりがちな事例を多数用意しています。実際の事例の映像を見ながら、どの部分をどのように改善したらよいかを話し合います。さらに、考えた改善案を自分たちで何度も口に出してみながら、本当に伝わりやすくなったのかどうか吟味します。こうしたトレーニングを繰り返すことで、最初は各ケースの映像を見てもどこが問題なのか分からなかった受講者が、徐々に「これは伝わりにくい」「もっとこうした設計で話した方がいい」などと、話の設計図を描けるようになっていきます。
受講者の中にはコミュニケーション力に自信をお持ちの方もいらっしゃいますが、トレーニングの途中でそれがいかに曖昧かつ自己流であったかに気が付いて、ハッとされる方も多いですね。私たちの研修は魔法ではありませんので問題意識と努力は必要ですが、そこに気付いていただくだけで、日常のコミュニケーションへの意識は格段に変わると思います。

伝える技術を磨き、会社・人生の可能性を広げる

私は昨年から早稲田大学理工学部の大学院でロジカルコミュニケーション講座を担当しています。他大学教授の友人から「最近の大学生は授業の1時間半、集中力が持たなくなっている」という話を聞いていたので、最初はちゃんと聞いてもらえるかどうか不安を感じていました。しかし、いざやってみると3時間という長丁場にもかかわらずちゃんと耳を傾けてくれました。「伝え方やコミュニケーションに対するソリューションがこれほど渇望されているとは!」と、正直驚きました。もちろんこうした方は、企業の中にも職種にかかわらずたくさんいらっしゃいます。私が担当している大手メーカーのように、新任課長の昇格試験にロジカルコミュニケーションを取り入れる企業も出てきました。子どもの頃から伝える技術を学んできておらず、伝えることへの意欲が低く、意識も弱いといわれる日本人ですが、潜在的な意欲や問題意識は誰でも持っています。そこに「火をつける」ことで大きな可能性を引き出すことができると、企業が気付いてきたことの表れではないでしょうか。
日本のビジネスパーソンがきちんとものを伝えられる文化になっていくと、企業活動は間違いなく良い方向へ変わっていくはずです。会議時間の30%は不毛だといわれていますが、その様相も一変するでしょう。また伝える技術があれば、相手ととことん議論したり、相手の提案を否定することになったとしても相手を傷つけるのではなく、より生産的・合理的な方向に議論を導くことができます。さらに営業職と技術者、新人とマネジャーといった職種や立場を超えて分かり合えたり、経験のある人とない人のワークシェアリングが可能になったり、文化の異なる国でのコミュニケーションもずっとスムーズになるはずです。 伝える技術は、一生を通じての技術にもなりえます。伝えることが上手になれば、まず自分の考えていることを整理でき、それを人に伝えることで、相手から新しい観点の示唆をもらうことができます。その示唆は、自分の知見を深め、考えの視界を広げるきっかけにもなるのです。それはまさに「人生の技術」ともいうべきものであり、これからの厳しい時代を生き抜く上で役に立ち、仕事や人生の幅や可能性を広げてくれると思っています。
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