このままでは組織の求める管理職になれない? 中堅社員たちは、いま

執筆者情報
人材開発トレーナー
矢野 正樹

新入・若手社員と管理職の狭間で、研修機会の必ずしも多くない中堅社員。最近このクラスへの関心が高まっています。弊社が7月に開催した“フォーラム2006”で、人事担当の方々にアンケートを行ったところ、「中堅のリーダーシップ強化」が、「組織活性化」に次いで、いま最も関心あるテーマの第2位になりました。入社10年前後の中堅社員たち、いま企業と彼らの間に何が起こっているのか。「中堅社員研修が大好き」というトレーナーに話を聞きました。


元気になった中堅社員と、危機感を募らせる人事部のギャップ。

元気でエネルギッシュ。自分の仕事にやりがいを持ち、創意工夫しながら目いっぱい働いている。ここ3年ほど顕著な中堅社員の特徴です。色々な企業から参加者が集まる「公開中堅社員研修」では、何年か前と最近とでは、参加者の意欲も態度も大きく異なっています。1990年代後半から2002〜3年頃までは、「会社に先が見えなくて不安です」と、実に正直な自己紹介をする人もいましたが、ここ3年は、「こんな大きな仕事を担当しています」と、仕事の醍醐味を活き活き語る人が多くなりました。
今の中堅社員は、入社した時からパソコンを与えられ、過去のドキュメントと最新の情報、テンプレートも活用してレベルの高いアウトプットを平然と出す世代。昔に比べると権限委譲されていて、担当職務に関してのプロ性も高い。「この業務に関してなら、自分が社内でNo.1だ」と、自分の仕事に誇りを持てる環境にいることが、彼らの意欲の高さの背景にあります。

それでは、こうした中堅社員を企業人事はどう見ているのでしょうか。実は、「このままでは組織の求める管理職になれないのでは?」と不安の声が多いのです。先に述べた中堅社員の特徴と矛盾するようですが、中堅としての職務姿勢が、管理職としての必要条件につながらないことが、多くの企業の悩みの本質です。本来、どんなに専門性の高い仕事でも、ビジネスシステムのほんの一部を担当しているにすぎません。今の中堅社員を見ると、どうも、仕事の全体像と自分の仕事との関係を、正確に結びつけられていないのです。担当領域が評価されるといいなぁ、今の状態をずっと続けたいなぁ、と思っている。例えば、パソコンに向かって企画書を作るのは大好き。でもそれを通すために取締役会でプレゼンテーションしたり、他部署と交渉するのは自分の仕事じゃないと思いがち。プロジェクトリーダーといった仕事にも、魅力より重圧を感じ、積極的にやりたがらない人が多い。「命じられれば受けるけれど、自分からは手を挙げない」そんな傾向が強いのです。

個人主義的な視点を、組織全体を俯瞰できる高い視点に変える。

企画書を作る=自分の担当分野を完遂するのは、ビジネス全体から見るとほんの一部なんだということは、上司に言われてもなかなか納得できないもの。むしろ「上司の追加オーダーのせいで、余計な労力がかかる」「自分のプランでも十分なのに直される」とネガティブに受け止め、自らも積極的に働きかけないので、結果として苦労の種を蒔いてしまっているケースが多い。上司は敵ではなく、新しい挑戦や大きな変革に向かう時、最強の味方になる存在だと、心の底から信じている中堅社員は決して多くありません。残念なことです。

中堅社員向けの研修では、経営マーケティング的な観点、積極的補佐、コミュニケーションの重要性に気付く体験学習をメインに据えることがよくあります。体験を通じて、「上司に報告しなくちゃ(いけないんだ!)」とか、「頭では分かっていたけれど、実践できていなかったことに初めて気付いた」という声が多く聞かれます。腑に落ちた瞬間、彼らは変わります。先日、ある企業の研修で、参加者の一人から「この研修をとても楽しみにしていたんです」と言われました。話を聞くと、「3年前、先輩がこの研修から帰ってきて明らかに変わった。それがとても印象に残っていて、自分も期待していました」と。非常に嬉しかったですね。
研修の場で出会った同期のメンバーがその後、自主活動を始めるケースもあります。中堅クラスは、自社の組織風土や仕組みに問題意識を持っている人が多い。どうしたらもっといい会社になるんだろうと考え、仲間や後輩と改革に向けスクラムを組んでいきたいと思っている。同じ気持ちを持った同士が研修で盛り上がって、「じゃあまた会おうよ!」と始まることが多いようです。

気の持ちようや環境で人は変わる。中堅社員をもっとブレークさせたい。

中堅クラスの方々は素直で吸収力が高いので、私たちとの出会いがキャリア=職業人生に与える影響も大きい。1回1回、一人ひとりに心して向かわないといけないと、いつも思っています。可能性に満ちている中堅社員向け研修は、私にとって純粋に楽しく、やりがいのある真剣勝負の場。私は、弊社の研修プログラムの大半を20代のうちに体験してもらえたら、それは物凄い効果が出ると思っています。マネジメント層や次世代リーダーを対象とした研修を中堅社員向けにアレンジして実施しても、きっと彼らなりの方法で吸収してくれると思います。

中堅世代には、ニートやフリーター、非正社員が大勢います。望んだ仕事に就き、しかも研修を実施してくれる企業で働く中堅社員は、実はとても恵まれた環境にいます。中堅社員の皆さんに私からメッセージしたいのは、「遠慮せず、ビビらず、怖じけず挑戦しよう!」ということ。新規事業を立ち上げられるくらいの人材になって欲しい。会社に入ったからには、ゴールはトップになること。しかも、旧来志向の事業を守るのではなく、「スタートは小さな事業からスタートしても、いつか本体より大きくしてやる」という気概を持ったチャレンジャーが出てきて欲しいですね。優秀で協調性があるだけでは、仕事はおもしろくないし、日本も本物の元気を手に入れられないですから。

最後に、
人事の皆さんにお願いがあります。採用の時に出会った新人が、どこに配属され、どんな上司の下で、何を感じながら、どんな仕事を担当しているのか、ウォッチしてあげて欲しいのです。採ったら後は現場に任せ放しではなく、ずっと見守り続けて欲しい。また、経営陣には、若手や中堅の心に響くビジョンを掲げていただきたいものです。財務オリエンテッドな事業計画の他に、共同体としてみんなが夢や目標を持てる、「こういった企業になる、あり続ける」という組織の求心力。それが見えると、彼らはもっと元気になると思います。

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