ソーシャルスタイルでビジネスを乗り切る 一石三鳥を狙え

執筆者情報
人材開発トレーナー(シニアパフォーマンスコンサルタント)
和田 康裕

ご承知のとおり、会社組織においてコミュニケーションは非常に重要だ。大規模な商談の成功から、社内での日々のミーティング一つに至るまで、コミュニケーションなしでは成り立たない。しかし、メールなどのITコミュニケーションツールが一般的になった今日では、利便性を享受した一方で、人と人が直接コミュニケーションをする場面が減り、コミュニケーション能力が落ちてきているのではないかといわれている。また、折からの景気後退や、年齢や雇用形態の面で複雑化する職場の人員構成が、コミュニケーションを取り巻く状況を一層難しくしている。

特に、最近お客様からの悩みで多く耳にするのは、会社組織でよくある、コミュニケーション能力が非常に重要となる次の3つの場面についてだ。

(1)急激に景気が後退した中で、より一層深いコミュニケーションが求められる顧客対応場面。
(2)組織のフラット化や景気後退前の大量採用の結果、年上から新人までの幅広い年齢の部下に対応しなければならないマネジメント場面。
(3)非正規社員の増加に伴い、多様な年齢と雇用形態のメンバーを束ねることが必要なチームビルディング場面。

これらの場面で、円滑なコミュニケーションの先にある成果を追求していくためにはどうしたらいいのか。解決は決して容易ではないが、その糸口になりそうなものがある。それは人への理解を促進させることである。そして、それには今回ご紹介するソーシャルスタイルが非常に参考になると思う。これから、上記3つの場面でのソーシャルスタイルがどのように活用できるかについて、お伝えしていこう。


4つのタイプを見極めよ。 −ソーシャルスタイル理論の概要

はじめに、「ソーシャルスタイル」の概要を簡単に説明しよう。

ソーシャルスタイルとは、他者から観察できるような、人が習慣的にとる行動の傾向のことをいう。もともとアメリカのデイビッド・メリル博士によって構築された行動科学の理論である。長年の研究の結果、行動傾向には、「自己主張度」と「感情表現度」の2つの尺度があり、その組み合わせにより、4つのソーシャルスタイルがあることが分かっている。

「自己主張度」とは、自分の意見を主張する傾向があるか、それとも他者の意見を聞く傾向があるかを測る尺度である。ただし、意見の内容や背景にある思想、意思などは関係ない。あくまでも意見を主張する頻度で判断する。

「感情表現度」とは、感情を率直に表現する傾向があるか、感情を抑える傾向があるかを測る尺度である。喜怒哀楽の感情は誰しもあるが、それをどれくらい表に出すかどうか、つまり、周りの人から見て、どれくらいその人の感情がわかりやすいかで決まる尺度である。

さて、これら2つの尺度を組み合わせると、下図のように4つのソーシャルスタイルが生まれ、各スタイルには、それぞれ下記のような特徴的な行動傾向が認められる(図参照)。

ただし、この「自己主張度」と「感情表現度」とは、「どのレベルがいい」というものではなく、4つのソーシャルスタイルにも優劣はないという点は、ご注意いただきたい。

このソーシャルスタイルこそが、自分と相手を理解することに役立ち、相手にとって心地よいコミュニケーションが何かを教えてくれる非常に便利なフレームなのだ。

営業場面に世間話は必要? −顧客対応におけるソーシャルスタイルの活用

それでは、まずはじめに(1)顧客対応場面におけるソーシャルスタイルの活用をご紹介させていただこう。

当然のことながら、お客様にもいろいろなタイプがある。実際、どんな営業担当にも、それぞれ苦手なタイプのお客様がいて、時に苦手なタイプのお客様へは訪問しなくなったり、関係が悪くなったりしてしまい、結果として取引できるタイプに偏りが出ることがある。そこで、顧客対応場面でソーシャルスタイルを活用することにより、それぞれのタイプのお客様に対し、どのように対応すればコミュニケーションが円滑になり、結果として関係がよくなったり受注や契約につながるか? というヒントを得ておくことが有効だ。

例えば、実際の営業場面でよくいわれる指導の一つに、「世間話や雑談をして場を和ませろ!」という言葉がある。これは決して間違ってはいないが、厳密には「相手のタイプを見極めて、必要なときは世間話や雑談をして場を和ませろ!」というのが正しい。なぜなら、「感情を表す」エクスプレッシブとエミアブル(上図参照)は世間話や雑談が好きだが、「感情表現を抑える」ドライビングやアナリティカルは、ビジネスライクで世間話や雑談を好まないからだ。ドライビングのお客様には、「何しに来たんだ!」と叱られるかもしれない。

上記の例は、「感情表現度」のレベルによる違いの例だが、「自己主張度」のレベルによる違いもある。例えば、自己主張するタイプのドライビング、エクスプレッシブはコミュニケーションのスピードが速い。基本的にせっかちで、しゃべるのも行動するのも速いし、意思決定も早い。したがって、上手に営業できれば即決も夢ではない。

一方、エミアブル、アナリティカルはコミュニケーションのスピードがゆっくりしている。しゃべるのも、行動するのも、意思決定もゆっくりしている。したがって、短期間で結論を迫ると失敗することが多い。じっくりと時間をかけて営業する必要があるのだ。

このように、ソーシャルスタイルを知ることにより、そのお客様との適切な接し方もわかるし、どのような購買行動をとるかも予測できるので、お客様とのコミュニケーションがスムーズになるのである。

あなたの部下・上司は何タイプ? −マネジメントにおけるソーシャルスタイルの活用

次に、(2)マネジメント場面におけるソーシャルスタイルの活用をご紹介させていただこう。

お客様と同様に、部下にもいろいろなタイプがあるし、上司にもタイプがある。マネジメントスタイルは、ソーシャルスタイルが全てではないが、少なからず影響を受けている。よって、まず何よりも大切なことは、上司自身が自分のソーシャルスタイルを知ることをきっかけに、自分のマネジメントスタイルを振り返ってみることだ。それでは、上司の行動傾向について、4タイプに分けて簡単に解説してみよう。

■エクスプレッシブの上司:
義理人情に厚く、夢を追いかけるタイプ。部下に熱く語り、俺について来いとばかりに勢いよく走るが、振り向くと誰もついて来ていなかった・・・なんてこともある。自分の行動を冷静に振り返り、思いつきや勢いだけでマネジメントしないように気をつけることが大切だ。

■ドライビングの上司:
成果にこだわり目標に向かってまっしぐら。効率や論理を重んじるあまり、部下の意見を聞いたり、気持ちを汲むことがおろそかになることがある。指示、命令だけでなく部下の意見に耳を傾けることも必要だ。

■エミアブルの上司:
人間関係を重視する調整タイプ。社内外の関係者に気をつかうことが持ち味。一方で、人に要望したり、指示したりすることが苦手な傾向がある。マネジャーとして決断したり、部下にはっきりと要望することも大切である。

■アナリティカルの上司:
さまざまな情報を収集し、正確な意思決定をしようとする傾向がある。真面目で堅実だが、一方で判断が遅くなったり、部下との人としての関わりが薄くなることがある。時にすばやく決断したり、部下と積極的にコミュニケーションすることを意識するとよい。

一方、部下のタイプによっても、マネジメント上のポイントは異なっている。例えばエクスプレッシブの部下は、気持ちを盛り上げつつ、ついもれがちな細部はしっかりチェックさせることが効果的である。ドライビングの部下に対しては、目標を明確にして、なるべく部下の自主性を尊重した上で、節目ではポイントをアドバイスすると効果的だ。エミアブルの部下には、いつも見ているという安心感を与え、効率や成果の視点を意識させるとよい。最後にアナリティカルの部下は、仕事の目的について時間をかけて納得させた上で、忘れがちな納期の観点を意識させ、ときどき行動が止まっていないか確認するとよい。

さて、あなたの上司・部下は、どのタイプだろうか、そして、あなた自身はどのタイプだろう。少し想像していただくとよいだろう。

あのメンバーとも議論はできる。 −チームビルディングにおけるソーシャルスタイルの活用

最後は、(3)チームビルディングにおけるソーシャルスタイルの活用をご紹介させていただこう。特にチーム運営が上手くいかない・・・という方には、ヒントにしていただければ幸いだ。

新しい期になって組織が新しく編成されたり、組織横断でプロジェクトが立ち上がることはよくあることだ。しかし、このときになかなかチームづくりができないという話をよく耳にする。そもそもチームとは、さまざまな立場・価値観の人と、一つの共通した目標に向かって協働することが求められる。しかし、チームのメンバー同士の相互理解が図れていないと、チームとして十分に機能しないことがあるのだ。そこで、メンバーの行動タイプを理解して、コミュニケーションを円滑に進めるヒントとして、ソーシャルスタイルが役に立つのである。

先に述べたように、ソーシャルスタイルは、他者から観察できる人の行動傾向である。その人の行動を観察するだけで、ソーシャルスタイルは判別できる。したがって、ある程度の期間一緒に仕事をしているチームのメンバーなら、お互いのソーシャルスタイルをかなり正確に判別できるはずだ。さすがに価値観や性質までは分からないものの、例えば会議を進める上で自分やメンバーがストレスに感じていた理由が分かるし、それにどう対処すればいいかも見えてくるだろう。それでは、それぞれのタイプとの打ち合わせや会議場面を考えてみよう。

■エクスプレッシブのメンバーとの会議:
思いつきでどんどんしゃべったり、話が脱線したりする。ある程度気持ちよく話してもらいつつ、論点や会議のゴールをきちんと設定しよう。

■ドライビングのメンバーとの会議:
根拠となる事実やデータに基づいて、論理的に簡潔に話そう。そうしないと「要は何なの? 結論は?」と言われてしまう。

■エミアブルのメンバーとの会議:
その人の気持ちに共感しながら、事例や影響力のある人の意見を引き合いに出すと合意を得やすい。会議だとあまり発言しないので、個別にフォローすることが効果的である。

■アナリティカルのメンバーとの会議:
できれば事前に資料を渡して目を通してもらっておくとよい。打ち合わせ時に疑問や不安を出してもらい、それを事実やデータを示して解消するとスムーズだ。また相手の沈黙を恐れてはいけない。それは考えている時間だからだ。

さて、あなたのチームのメンバーには、どのタイプが多いだろうか?

一石三鳥のススメ。 −ソーシャルスタイルの活用に向けて

このようにソーシャルスタイルはさまざまな場面で活用することができる。
ここで共通して言えるのは、ソーシャルスタイルは人を理解するためのツールであり、コミュニケーションを円滑にするということである。コミュニケーションが円滑になることで、例えば顧客満足につながり、マネジメントの向上につながり、チームづくりがスムーズになり、やがては会社組織でのさまざまな成果につながっていく。

コミュニケーションにまつわる全ての問題をソーシャルスタイルが解決するというわけではないが、少なくとも問題解決に向けた大きな武器になることは間違いない。なぜなら、ソーシャルスタイルは、4つのタイプに分けるという分かりやすさが社内の興味・関心をひきやすく、また、行動傾向さえ分かれば応用できるという簡便さから、すぐにでも職場の様々な場面で応用できるというメリットがあるからだ。

例えば、ある会社の営業組織で、マネジャー層から新入社員まで全員がソーシャルスタイルを知っているとしよう。営業担当は、自分の顧客対応でソーシャルスタイルを活用できる。営業マネジャーは、部下のマネジメントと顧客対応の両方でソーシャルスタイルを活用できる。そして、営業組織の構成員全員がチームづくりの前提となる相互理解のツールとしてソーシャルスタイルを活用できる。つまり一石三鳥ということになる。

是非みなさんの会社でも一石二鳥、三鳥を狙ってほしい。

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