部下をどのような「ものさし」見ればよいのか 個人から組織の成長までを促す 書籍『部下育成の教科書』とは?

「若手がいつまで経っても自立してくれない」「中堅社員が伸び悩み気味」「ベテランが全然、やる気を起こしてくれない」など、部下育成に関する悩みを抱えてはいませんか? 今回はそんな悩みに効く書籍『部下育成の教科書』(ダイヤモンド社刊)を執筆した3人に、座談会形式で部下育成について話し合ってもらいました。ますます多様化し、人材の出入りが激しくなる組織において、部下をどのような「ものさし」で見て、育てていけばいいのか、同書を読んでヒントを掴んでいただければ幸いです。


人材の多様化で深まる部下育成に関する悩み

--3人はこのたび、『部下育成の教科書』を共著で書かれました。まずは、この本を書くことになった経緯や動機について教えてください。

山田:始まりは約2年前、業種の違う全10社、のべ150人の方たちに自らの成長の軌跡について話をうかがったことでした。若手から役員までありとあらゆる階層の方々をインタビューして気づいたのは、業種は違えども、一人の人間が職業人として成長していくプロセスにはある一定の段階があるということでした。本ではそれを「ビジネスパーソンの10のステージ」として紹介していますが、じつは、このこと自体が非常に大きな発見だったと言えます。当初はそれを「トランジション・デザイン・モデル」としてまとめ、クライアント企業の人事部の方にお伝えしていたのですが、「せっかくなら、もっと多くの方に読んでいただけるものにしよう」と、インタビューを担当した私と本杉、そこに出版社勤務の経験もある木越も加わって、3人で本を書くことになりました。

木越:最初に2人がまとめたインタビューを読んだ時に、日本企業の強みというか、これまで持っていた良さというのは、まさにここに詰まっている、と感じたことをおぼえています。本の中に、成長のキーワードとなる「トランジション(変わり目)」という言葉が出てきますが、まさにこのトランジションは上司や先輩など周囲の人たちとの関わりの中で起こり、それがないと、次の成長ステージへとうまく進んでいくことができません。ですから、本を書くにあたっては、ここでもう一度、日本企業の強みでもあった「みなで一緒に成長していく喜び」を再認識してもらい、それを普遍性のあるものへと発展させていくお手伝いができれば、と思っていました。

本杉:じつは私、このプロジェクトに参加する以前は営業職でした。クライアントと話をさせていただくなかで課題として強く感じていたのは、部下育成に関する悩みが非常に大きい、ということでした。その背景として、二つの大きな変化があると思います。一つは、プレイングマネジャーの増加。マネジャー自身が実務を背負っているがために、部下育成にまでなかなか気が回らない、あるいは、育成したい意識はあっても、短い時間と少ないマインドシェアで、それをどう実践していけばいいのかがわからない。もう一つは、昨今若手社員の能力のバラツキも非常に大きくなってきていることです。入社3年目、5年目の研修で集まってもらうと、その時点ですでにかなりの差が出ている。成長のスピードは扱う仕事の内容によっても変わりますが、上司の育成方法による違いもあるのではないか、と感じていました。

山田:バラツキが大きくなったのは、中途採用が増えたことも影響しているのではないでしょうか。新卒一括採用のみであれば、一律にこう育てればいいという知見があったものが、だんだんと、それが通用しなくなってきている。このことも、育成の指針が掴めなくなってきている要因の一つだろう、と思います。

大きく成長するきっかけは「伸ばす」と「抑える」

山田:海外の先行研究には「リーダーシップパイプライン」という考え方があり、そこではやはり、役職が上がると同時にそれぞれの段階で大きな転換が必要になる、と指摘されています。しかし、日本人の感覚からすれば、役職が上がらなくても成長することはある。ですから、この本ではむしろ、役職とは関係なく、若手から中堅まであらゆる階層の社員にそうした成長の段階があり、これを参考にしてもらえれば、「誰しも確実に成長できる」というメッセージを強く打ち出したい、と考えていました。

本杉:成長に関しては、「ぼくはもう、そこそこでいいです」「これ以上、昇進したくありません」という声が広がっているのも感じます。しかし、そういう人の多くは実際に成長したことがなく、その喜びを実感できていない。成長の喜びを実感してもらうには、いったいどのような体験が必要なのか。当初は、そのことを強く意識してインタビューに臨んでいました。

山田:研修などで話をうかがうと、大きく成長した方はたいてい「一皮むけた経験」をお持ちです。ですから、どこかの時点でそうした経験が必要なのだろうという仮説は、最初から持っていました。

本杉:そういう意味で印象的だったのは、成長の階段を上っていくためには、「伸ばす」ばかりではなく「抑える」ことも大事だという点です。みなさん、インタビューで口々におっしゃっていたのは、ある時期、「こんなことをしていては駄目だ」とマネジャーにしかられたという体験でした。それによって、「自分はもうリーダーなのだ」と自覚した方も多くいました。

山田:成長の階段を上っていく過程で経験するトランジションには短くて半年、長いと数年かかることもあります。ただし、そこには必ず「入口」と「出口」のサインがある。上司と部下のおのおのが、そのサインを見逃さずに正しく掴んで、本人が「これは次のステップへ進んでいくために必要な体験なのだ」と意識しながら経験を積んでいくことが大事だと思いますね。

「どう育てるか」の前に、まず「どう見るか」の「ものさし」が必要

木越:じつは、管理職向けに「どうやって部下を育成するか」のテクニックが書かれた本はけっこうあります。しかし、その前提となる「部下をどう見るか」が書かれた本はあまり見かけません。マネジャーと部下が共通の「ものさし」を持たないまま面談をしても何を話して良いかわかりませんし、下手をすると、部下の抵抗感ばかりが強くなってしまいます。育成のテクニックを生かすという意味でもやはり、この本に書いてあるような共通の「ものさし」で、まずは部下の成長を測ることが必要だと思います。

--本の後半では、マネジャーと部下との1対1の関わりを超え、それをチーム全体に取り入れる方法論が提示されています。ここまで行くと、「やや難しい」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

木越:そこはたしかに悩んだところで、編集者からも「ここまで書く必要があるのか」と指摘された部分です。ただ、企業という組織全体を考えると、最終ゴールは個人の成長ではなく、チーム全体としてどう成長していけるかということですから、それは本の中でも明確に示す必要がある、とこだわった部分です。

山田:部下同士が関わりながらチーム全体として成長していくための鍵は、それを可能にする「リーディングプレイヤー」がいるかどうかです。一般社員は「スターター」「プレイヤー」「メインプレイヤー」と階段を上り、マネジャーを補佐しながら主力としても活躍する「リーディングプレイヤー」へと成長していくわけですが、昨今の現実からいうと、このリーディングプレイヤーがマネジャーよりも年上というケースも珍しくありません。そうした場合にも、できるだけ感情的にならず、マネジャーとリーディングプレイヤーがお互いに目線を合わせて協力しながらチーム全体をコーチングしていくためにも、本の中で書いた共通の「ものさし」が大いに役に立つはずです。

本杉:じつは私自身、この本を書いている間にマネジャーに昇進し、部下を評価することの難しさを実感しています。部下は一人ひとりに個性がありますし、それぞれ成長の軌跡も違います。自分自身の基準だけで考えて改善点を伝えても相手にはうまく伝わりません。ですから、共通の「ものさし」があると、たしかに便利だとは感じます。

山田:執筆の間、3人でよく話していたのは「10年後、20年後も使える本にしたいね」ということでした。一義的にはもちろん、部下を持って悩む管理職の方に読んでいただきたいのですが、これから社会人になる学生にも十分に参考にしていただける内容だと自負しています。20代の頃は、つい同期と比較して「あいつはもうこんなに大きな仕事をしている」と焦ったり、「それに比べて自分はなんてつまらない仕事をしているのだ」と落ち込んだりするかもしれません。しかし、業種や仕事の内容によって成長のスピードは違っても、踏んでいく段階はみな同じ。だから、「人より遅れている」と決して焦らなくていいし、自分の段階をきちんと掴んで、上るべき階段を上っていけばいいんだよ、と後輩たちには伝えたい。これは、若き日の自分自身に対するメッセージでもあります。
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