「異粒」化している社員に光を当てる スマートパフォーマーの時代 〜「できる社員」の変化〜

執筆者情報
コンサルティング部
シニアコンサルタント
山田 義一

「社員が『小粒』になってきている。以前は……」
ここ数年、このようなお客様の声をよく耳にします。確かに頷けるところもあります。しかし、どのような組織にも従来同様に「できる社員」は存在しています。社員の粒が小さくなっているというよりも、組織の内外の環境の変化に合わせて、その質が変化してきているといえるのではないでしょうか。
『異粒』化している社員に光を当てることで、人事にできることが新たに見えてくるかもしれません。今回のコラムがそのヒントになれば幸いです。


ハイパフォーマーの変化

ハイパフォーマーが変わってきている。
人事コンサルタントに転じて早15年。ここ数年来、コンサルティングの現場で気になっていることだ。

職業柄、人事制度や育成体系構築などの目的で、クライアント先で優秀とされるハイパフォーマー(高業績社員)、いわゆる「できる社員」にインタビューをする機会が多い。このインタビューの場に出てくる社員の第一印象や雰囲気、話し方や話の内容が明らかに変質しつつあるのだ。

従来のハイパフォーマーは、独自の武勇伝や、体に張り付いたような濃密な経験を持つタイプが多かった。その内容は三場といわれる「修羅場」「土壇場」「正念場」にからむ話だ。事業を任された経験や寝耳に水の出向・海外赴任、最大手顧客からの突然の取引停止などさまざまだ。以前、NHKで放映されていたプロジェクトXさながら、起伏のある話が続き、最後はそこでの苦労や経験が実を結ぶ。インタビューを忘れ、こちらも話に思わず引き込まれることもあった。

一方で、昨今のハイパフォーマーには、武勇伝やトラウマ寸前のどろっとした経験を話しだす方がめっきり減っている。だからといって、インタビュー内容が従来と比較して物足りなかったり、本人の印象が薄かったりというわけでもないのだ。私は従来と明らかに異なる彼・彼女らを、「スマートパフォーマー」と呼んでいる。

ハイパフォーマーからスマートパフォーマーへ

インタビューでの従来のハイパフォーマーの第一印象は、少しぎらぎらして、エネルギッシュ、やや前のめりなタイプが多かった。もしくは、何となく不機嫌そうで、早く終わりたいという雰囲気をはじめから意図的に発している場合も少なくなかった。いずれにせよ、その社員がインタビューの場に現れると、多少なりとも空気・雰囲気が揺いだものだ。

昨今のスマートパフォーマーに多い印象は、脱力・リラックスしている感じだ。全身に無駄な力が入っておらず、肩の力がすとんと抜けていて、相手にも緊張感を与えないのだ。そのため、本人がミーティングの場に現れても、短時間で自然にインタビューに入れることが多い。事前に本人の履歴や実績から思い描いていたイメージと、実際に目の前に現れた彼・彼女の普通な姿に、新鮮なギャップを感じることもある。

話し方や話す内容も、大きく変わってきている。
従来のハイパフォーマーは、過去の体験を話す中で、当時を思い出し、感傷的になり、涙ぐむ時すらあった。また、本人が自分の話に夢中になり、脱線し、なかなか止まらなくなることも多い。インタビューを進めるうちに、本人が過去の濃密な原体験ともいうべきものを重視していることがよく分かる。

スマートパフォーマーの話し方や話す内容には、以前のような派手さや起伏は少ない。だが、仕事やキャリアに関する質問を重ねるうちに、本人の考え方や価値観の輪郭が伝わってくることが多い。インタビューを進めていくほどに、なぜこう考えたのか、どうしてそう行動したのかという、本人の思考や行動特性がつながってくるからだ。

1時間近くインタビューをしていると、彼・彼女がこう考える、こう行動するだろうと察することができるようになる。うまく表現できないが、本人に対して「透明感」のようなものを感じるのだ。本人の考えや行動に自然と軸が通っており、個々の言動を通じて相手に分かりやすく伝わってくるからだろう。文化や習慣が異なる、グローバルなシーンでもこのような「透明感」のあるスマートパフォーマーは人気があるはずである。

また、以前のハイパフォーマーに比べると、自分自身を理解したうえで、仕事の経験やその意味をより深く考えている。過去の些細な仕事や短期間の人間関係、小さな成功・失敗体験であっても無駄にしない。日々の仕事を食い散らかしたり、やり過ごしたりすることなく、定期的に振り返り、内省しつつ、しっかり自分に取り込んでいる。話を聞いているうちに、地に足のついた人柄や仕事ぶりをしみじみ感じさせるのだ。

従来のハイパフォーマーの話では、その時々に直面したさまざまな経験を積み上げてきた結果、現在の自分に至るような流れが多かった。無茶や失敗から学ぶ機会、いわば回り道が許されてきたことが分かる。

しかし、昨今のスマートパフォーマーには回り道は許されていない。社内外の環境が厳しくなる中で、さまざまなルール・決まりに縛られ、限られたチャンスやリソースを活かして、常に効率よく成果をあげ続けることが求められているためだ。

単純に世代・年代で紋切り型に決め付けはできないが、バブル世代・40代半ば以上のハイパフォーマーは、多様な経験を経て、自然発生的に積み上げてきた人が多い。40代半ば以下の、スマートパフォーマーの世代・年代は、さまざまな制約条件の中で、より少ない機会を最大限活かしながら、自らの経験を無駄なく効率的に取り込むこと、まさにスマートに働くことが求められているのである。

スマートパフォーマーの3つの特徴

そうしたスマートパフォーマーの「スマートさ」とは何か。
日々のコンサルティングでの現場で、見聞きした事実とそこで感じたことをベースにして3つにまとめてみた。

1. 成功の連続に見える小さな失敗・修正の積み重ね
 
スマートパフォーマーは、大きな失敗や挫折なく、比較的順調に物事を成し遂げてきたような方が多い。しかし、本人に仔細に話を聞いていくと、決して順調なわけではない。成功の連続に見える秘訣は、より早く、より小さい失敗・修正を意図的に経験していることだ。この失敗・修正のサイクルが並外れて速いために、あたかも連続してうまくいっているように見えるのだ。
若手を育成したりする際に、よくRepeat Small Wins.(小さな成功体験を積む)という表現を見聞きする。しかし、実際のスマートパフォーマーのやっていることは、Repeat Quick Loses.(俊敏な失敗・修正を重ねる)があってのSmall Winsなのだ。

2. 困難を“乗り越える”よりも、仕事そのものへの“のめり込み”
 
スマートパフォーマーは、他人からすると修羅場や土壇場の連続そのものに感じる仕事でも、本人は至ってマイペースで、涼しい顔をして淡々と打ち込んでいたりする。論語に出てくる「知・好・楽」ではないが、仕事やプロジェクトそのものをどこかで楽しみ、自然にのめり込んでいることが多いのだ。

3. 社会貢献意識の強さ

スマートパフォーマーには、従来のハイパフォーマーに典型的に見られる目的達成志向、自己実現志向とは異なる、プラスアルファの要素を感じる。それは、社会にポジティブな影響を与えること、世の中や仲間に役立つことへの意識の強さだ。実は、このような利他の心とでもいうべき考え方が、昨今の厳しい環境の中で働くスマートパフォーマーを少なからず下支えしているのではなかろうか。

スマートパフォーマーが溢れる組織に

多くの組織において、バブル世代・40代半ば以上の社員たちがそうであったように、武勇伝的な失敗や回り道をしながら、結果的にハイパフォーマーに至るような機会や場を継続的に提供する余裕や体力はあまりない。結果、次世代人材育成やグローバル人材育成などの目的で、限られた対象者に対して、計画的に回り道を提供しているのが実態だと思う。

一方で、実際のインタビューの場では、従来のハイパフォーマー型ではない、新たなスマートパフォーマーが着実に増えつつある。彼・彼女らは、厳しい制約条件の中で、世の中への貢献意欲を胸に秘め、肩の力を抜き、周囲の関係者への「透明感」をもって、自らの仕事に自然にのめり込みながら、着実にプロジェクトを前進させ、仕事をこなしている。

そのようなスマートパフォーマーを増やすために、人事には何ができるのだろうか?

バブル崩壊以降、多くの組織の人事課題の中心は、ポスト(任用・昇格枠)とコスト(人件費)の適正管理になりがちだった。しかし、昨今、人事の皆様と議論している中で、業界を超えて感じる人事のトレンドがいくつかある。その最たるものは、人事がもっと現場に足を運び、個々の社員に意識を向けようという動きである。実はこの動きの延長がスマートパフォーマーを生み出すことになるのだと思う。

なぜならスマートパフォーマーは、その無駄のない自然なスマートさ故に、短期的・相対的には従来のハイパフォーマーよりも目立ちにくい。だからこそ、より中期的・個別的な視点で誰かがスマートパフォーマーに光を当て続ける必要がある。それができるのは、人事をおいてほかにいないだろう。

人事が個々の社員を知り、配置や育成に展開し、継続的に支援し続けていくことで、スマートパフォーマーやその予備軍に光を当て、増やすことができるはずだ。

私自身も、人事コンサルタントという仕事を通じて、一人でも多くのスマートパフォーマーの育成・開発・活躍のお手伝いができればと思う。
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