英語の達人は、何を考え、何をやったのか。 結局、どうすれば英語はうまくなるのか?

執筆者情報
組織行動研究所
所長
古野 庸一

グローバル化の進展に伴って、英語力の必要性の高まりは、多くの人が認めるところです。
では英語の達人は、何を考え、何をやったのでしょうか?
「英語が上達した人としなかった人の違い」をもとに、社会人の英語学習の課題を考察します。


留学だけでは英語はうまくならない

「留学して、向こうで仕事して何年になる?」
「もう5年かな」
「じゃあ、ペラペラだね」
「まさか。アメリカに5年いても、そう簡単に英語がうまくなるわけじゃない」

20年前、米国に留学し、一時帰国した友人との会話である。私は、5年間も米国にいて英語がうまくならないことがあるのだと軽いショックを受けた。その友人は、米国でも著名な大学院に通い、授業を受け、試験をパスし、その後、米国の企業に就職していたにもかかわらず、英語がうまくならなかったというのだ。

その後、私自身が2年間の海外留学をしてみて、友人が言わんとしていたことを、身をもって、しみじみと感じた。外国で英語漬けの環境にいても、英語がうまくなるわけではなかったのだ。


海外からのお客様、海外への出張、そして海外赴任。ビジネスで英語力が問われる場面は、唐突にやってくる。どうにかなるだろうと思っていても、外国人を前にすると頭は真っ白になり、会話はしどろもどろになる。「英語の学習をしっかりやっておけばよかった」と、後悔しても遅い。

そのような経験をすると、英語の勉強をしようと思い立つ。はじめはやる気満々である。しかし、「数ヵ月もやっているのに、うまくなっている実感がない」と、どんどん不安になってくる。それに、次に英語を使う機会がいつあるかわからないとなると、次第にトーンダウンしていく。
ただでさえ、ビジネスパーソンは忙しい。仕事も忙しいが、プライベートも忙しい。趣味の時間も大切にしたいし、家族との時間も大切である。英語の学習になるべく時間をかけずにうまくなりたい。

「一週間でしゃべれる」
「聞いているだけで、ペラペラになる」
そのような言葉につられて、つい英語学習の教材を購入してしまうが、効果は上がらない。そもそも、そのように簡単にしゃべれるようになるのであれば、日本中が英語の達人だらけになっているはずである。

冒頭に話を戻すと、「習うより、慣れろ」で、留学したり、海外に行ったりすればどうにかなると思っている人も結構いるかもしれない。実際、私もそう思っていた一人だった。
もちろん、海外で修羅場を経験することによって、英語を身につけていく人がいることも事実であるし、英語が早くうまくなりたいのであれば、英語漬けの環境がいいことも否定しない。しかし、それだけでは不十分である。子供が自然に母国語を身につけていくことと、大人が第二外国語を身につけていくことは、かなり違うことなのである。

英語の達人は、何を考え、何をやったのか?

「結局、うまくなった人は長時間やっている」

懇意にしている英語学校の先生や英語教育の第一人者の方々の共通見解である。
ここで言う長時間というのは、1,000時間単位だ。普通に大学受験をした人が、英語でビジネスするためには、さらに1,000時間単位の学習が必要であるということである。

私自身が、海外のビジネススクールに行くための英語学習に要した時間は、毎日平均6時間を1年間継続し、2,000時間強。それで、授業を受けられる最低ラインに到達したと考えると、まともに会話をしようと思えば、5,000時間は必要なのではないかと思っている。

人には、やってもないのに「うまくなれそう」と自信がある領域がある一方で、やる前から「うまくなれそうもない」と苦手意識を持っている領域がある。私にとって、前者はゴルフで、後者がスキーと英語であった。もっと自信が持てればいいが、今でも英語がうまくなれるとはまったく思っていない。
また、私たちの調査でも、根拠がない自信がある人のほうが、そうでない人よりも、うまくなっているという事実がある。そういう観点で考えると、私自身の英語上達度は、かけた時間の割に伸びない典型であり、5,000時間というのはオーバーな見積もりかもしれない。

話を戻す。英語がうまくなれない人は、「長時間やらなければいけない」ということを知らないで、挫折してしまったのではないかと考えてみた。そこで、定量調査を行い、比較を試みた。英語力が向上した人(n=524名)と英語の必要性を感じながら学習が継続できなかった人(n=416名)を比較した。
「高校、大学まで英語教育を受けた人が、仕事上でNon-Nativeとして十分なコミュニケーションができるようになるには、どれくらいの時間が必要だと思いますか」という問いに対して、英語力が向上した人の65%は1,000時間以上と回答。ところが、継続できなかった人の65%も1,000時間以上必要であると回答している。
次に、実際の学習時間を見てみる。向上している人の34%は1,000時間を超えている。一方で、継続できなかった人は6.8%である。つまり、向上している人も継続できなかった人も1,000時間単位の学習時間が必要なことはわかっている。しかし、向上している人は、実際に行っており、継続できなかった人は行っていない。「わかっていること」と「行うこと」のギャップが如実に浮き彫りになる結果であった。

英語に限らず、「わかっていて、こつこつと実行する人」もいれば「わかっていてもできない人」がいる。企業経営も似ている。業績のいい会社に、秘策があるわけではなく、当たり前のことを当たり前に行っているという事実に肩透かしをくらう。

社会人のための英語学習メソッドはどこに?

英語力向上の鍵は、「長時間、継続してやること」であることはわかるが、継続できるコツがあるだろうか。定量調査とともに、TOEIC800点以上の人10名にインタビューを試みた。
英語の実力を測るのに、TOEICが適しているかどうか賛否両論はあるが、800点以上あれば、英語力のベースになる聞く力と速く読んで理解する力があり、そのための努力をしてきた人だと判断できる。

そのような人たちの話を聞いていくと、二つのタイプが存在することを発見した。目標を決めて追い込んでいくタイプと、英語そのものを楽しむタイプ。TOEICのテストの使い方も、前者と後者は違う。前者は、TOEICを目標として、そのために自分をドライブしていく。後者は楽しんでいる英語の実力を試すためにTOEICを使う。TOEIC試験対策も特にしない。10人インタビューして、前者5人、後者5人であった。
ただ、どちらのタイプもマンネリを避けるための工夫をしなければならないという話は多かった。毎日、継続しなければうまくならないが、継続しているだけではある一定レベルを超えないということである。
ランニングに似ている。体力維持のために定期的に走ることは必要だが、負荷をかけていかないと、タイムはよくならないのと同じである。
日々の学習方法の工夫とともに、しどろもどろになる機会を自ら設定している人もいた。「外国の学会やカンファレンスに参加する」「外国人と定期的に会議を行う」など、英語を使う機会を自らつくるということを行っていたのだ。

普通の人は、そこまでやろうとはなかなか思えない。したがって、前述したように、多くの人が「わかっている」けど「できていない」という状況にある。
「わかっている」けど「できていない」というギャップがあることは正常であると感じる。英語は必要になってくるかもしれないが、今のところ、英語がうまくなくても生活できる。だから、ほかにしなければならないことを犠牲にして英語の学習をしなければいけないと思うことの理不尽さも理解できる。今の日本において、そういう人が多数いることは、ある意味、正常に思える。


グローバル化の進展に伴って、英語力が高い人が一定数必要であることは、多くの人が認めるところである。しかし、「普通の社会人が、効率よく英語力を高めるメソッド」を研究している機関や研究者は、必要性の割には極端に少ないように感じる。そのような問題意識を持った研究者、実践家、教育者が集まって、社会人のための英語学習メソッドを確立していく研究機関を構築してもいい頃であると、個人的には考えている。
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