データの向こうに見えるものとは ESサーベイ、その広くて深い世界

産業全般で業績回復が続く中、従業員満足度(ES)への関心が高まっています。雇用形態の多様化など組織と個人の関係が変わっていく中で、なぜ今ESが注目されているのか。また、調査から得られたデータの向こうに見えるものとは何か。ESサーベイを担当するコンサルタントが語ります。


ESが注目されている背景

弊社のESサーベイ(従業員満足度サーベイ)は、2006年1月にESサーベイ2として、リニューアルリリースしましたが、わずか半年の間に多くのお客様にご利用いただいており、従来にないほどの企業の関心の強さを感じます。ESをテーマとしたセミナーにいらっしゃるお客様を拝見していても、非常に熱心に話を聴く姿が印象的です。私は、こうしたニーズの高まりにはいくつかの背景が考えられると思っています。

まず一つは、企業に余裕が生まれてきたということ。3、4年前にESサーベイのご提案をすると、「それはいいですね」と多くの企業が賛同してはくださるのですが、従業員の満足や意識よりも、目の前の業績をいかに高めるかということのほうが優先順位が高く、なかなかこのテーマについては手をつけられない状態でした。しかし、昨今は業績も上向き、あらためて社内を振り返ってみると、現場の従業員の様子がどうもおかしい。「会社は最高益だといっているけれど、自分も含めて職場のみんな、疲れているぞ」というような状況があったりする。このままで大丈夫なのか、従業員を大切にしていくということを本気で考えていかないとまずいんじゃないか。そのためにまず従業員の現状をしっかりと調査する。そのことを契機として、人の問題に真剣に取り組んでいきたい。こうした変化がベースにあるように思います。
もう一つは、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)経営、コンプライアンス、個人情報保護といったことが注目され始めてきたことでしょうか。リスクマネジメント的なことを含めてケアしなければならないと考えている企業は増えていると思います。こうしたことは、従業員一人ひとりのモチベーションとかロイヤリティによるところが大きいと考えられます。顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)の関係も指摘されています。ESが高いと、良い接客やサービスにつながるというわけです。特に労働環境が厳しかったり、クレーム対応が多かったりするストレスフルな仕事にこの傾向は強いように思います。病院やテレマーケティング会社といった広い意味でサービス業界からの依頼や問い合わせが増えているのは、こうした背景があるのだと思います。

依頼先は人事部門や経営企画部門が主ですが、ガバナンスやCSRを担当する部署からのケースも増えてきています。経営トップからの直接的な指示によるケースも多いと聞いています。経営者の方は、自社のESの状況はおおよそ把握されているようですが、やはり従業員のリアルな声はなかなか届かない。表向きのポジティブな声の陰で、「最近、従業員が疲れている」というような噂がちらちらと耳に入ってくる。本当のところは、どうなんだ。事実を知りたいという経営者の方は多いですね。

良いESと、悪いES

ESは高い方がいい。これが、一般的な企業の考え方だと思います。しかし一方で、ESが高いことは本当に良いことなのかという意見もあります。ESサーベイの結果を役員会に報告をすると、必ずといってよいほどこのような質問がでます。満足度が高いこと=現状満足、変革の機運が低くなるのではないかという意識が働くのは、人間心理として当然のことだと思います。だからといって、ESが低くていいのかというとこれは違います。低ければ当然、離職につながったり、会社に対する不信感やモチベーションの低下につながっていくからです。何をもって良いESの状態と見るか。この見極めは非常に難しいものがあります。例えば、データを鵜呑みにできないケース。ある企業で調査データが非常に高かったことがあります。確かに、給与水準は高く、仕事もある程度安定している。居心地が良いと感じるのも当然な面もあったのですが、外に目を転じて見ると危機感のない企業として見られていたんですね。社内の意識と社外の評価が乖離しているケースでは、いくらデータが高くてもやはり良いESとはいえないと思います。

良いESというのは、端的に言うと、健全な危機感のあるES。現状は現状で認めつつも「もっとこうしたい、さらにこうありたい」と、前を向いている状況だと思います。時々、調査データが非常に高い結果でありながら、「この高いことこそが、当社の課題なんですよね」と言ってくださるお客様がいらっしゃいますが、こうしたケースなどは非常に良いESの状態だと思います。
では、どうしたら良いESにすることができるのか。これはなかなか難しく、今後追究していかなければならないテーマなのですが、現時点で一つ感じているのは、高い目的・目標意識を持った組織には健全な危機感が醸成されやすいということです。単に売上を上げることだけを目標としているのではなく、しっかりとしたビジョンやミッションがあり、組織全体で共鳴し、共有している。このような環境を作るにはトップの資質はもちろんですが、トップの意志や意向を咀嚼でき、現場の従業員に語れるミドルマネジメントの存在が不可欠です。こうした組織のあり方が企業文化のレベルまでいっているような会社はやはり強いですよね。

活用してこそのESサーベイ

最近セミナーなどを通して感じるのは、ESそのもののことから「データをどう活用するか。良いES状態を作るにはどうしたらいいか」という質問をされる方が増えてきていることです。以前は現状分析で終わることも多かったのですが、随分と変わってきたと実感しています。確かにESサーベイ自体は、施策的なものではなくて、現状認識のためのツールです。言ってみれば、健康診断のようなもの。でも、データを取りっぱなしで何も施策を打っていかないと、ムダになる。大切なのは、データを活用して組織をどうやって健康体にしていくかなのです。ですから、活用への関心が高まっているのは非常に良いことだと思いますし、私たちがお手伝いできる範囲も広がります。

当社のESサーベイは、満足度の側面として〈仕事〉〈職場〉〈上司〉〈会社〉の4つのフレームでデータがとれます。そこからは、実にいろいろな組織の状況が見えてきます。過去や期待を含めた現在の状況と、戦略が目指す方向性、どんな人材がいるか。それらの関数の組み合わせでやるべき施策が見えてきます。課題を解決するために必要なのは、人事の仕組みなのか、評価制度なのか、上司のマネジメントの問題なのか、社内のコミュニケーションなのか・・・。具体的な施策を打つほか、ESサーベイそのものを職場のコミュニケーションのためのツールにしていくという使い方もあります。つい先日、お手伝いさせていただいたお客様のケースもそうでした。あるマネジャーの方が自分の職場のデータを見て、言われたのです。「会社に要求したいこともある。でも、自分たちでできることもきっとあるよね」と。そして、データを見ながらメンバーと話し合いを始められたと聞いたときは嬉しかったですね。少し楽観的と言われるかもしれませんが、私はマネジメントに携わっておられる方は基本的に「自分の職場を大切にし、いい職場にしたい」という思いを持っていると信じています。そういう方であれば、仮にどんなデータが出ても、前向きにとらえて、いい職場にするためのきっかけ作りにしてくれる。そんなふうにESサーベイを使っていただけたら、嬉しいですね。

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