成長企業の組織・人材マネジメントのあり方 ジーニー 2倍成長をデファクトに組織文化を作り上げていった

2010年に創業以降、最先端のアドテクノロジーを武器に急成長中の株式会社ジーニーは、どのようにして急激な事業成長に伴う組織の変化に対応してきたのか。同社 代表取締役社長 工藤智昭氏にお話を伺った。


事業拡大に向けて組織文化の醸成を優先

2010年4月にジーニーを創業して以来、2年間くらいは順調に事業拡大していたものの、社員数が50人を超えたあたりで最初の壁がありました。ちょうどベンチャーキャピタルの投資も得て、人数を大幅に増やそうとしていた時期です。事業も伸び盛りで、さまざまなメディアに取り上げられた影響もあり、大企業からの転職組も応募してくるようになりました。折悪しく、そんなときに、システムトラブルが頻発してしまったのです。

当時は年商10億円くらいの規模でしたが、そのことで年間約1億円の売上を失いました。勢いのある会社だと期待して入った中途採用の人たちも失望し、営業の約3分の1が退職してしまう事態にもなりました。

社内の雰囲気も沈み、私宛てに、会社への苦情を訴えるメールが毎日のように届くようになりました。経営者としては暗くなってしまった雰囲気を払拭して、早急に赤字を埋めないといけない。それも3〜6カ月というスピードでやりきらないといけない状況に追い込まれました。

そのときに考えたのは、やはり、組織文化を醸成することを優先すべきだったということです。そうした事態を招いた根本的な原因は、この会社に本当に合う人が誰なのか、その基準や伝え方が曖昧なまま、多様なタイプの人材を採用してしまっていた点にありました。ビジョンやバリューを掲げていても十分に浸透していなかった事実を強く反省し、組織文化を作ることに取り組みました。

採用に関してはまず、新卒に軸足を置きました。報酬に関しても、営業に携わる人たちに対してのインセンティブを厚くするなどの見直しをしました。その頃から「2倍成長」をデファクトスタンダードにする文化を作り上げていったのですが、この2倍成長というのは、上から押し付けたのではなく、メンバーが望んで出してきた数字です。

実は、営業の人間が大量に辞めてしまった際、新卒社員たちに飲みに誘われたのです。彼らは私に、「こうすれば売上を回復できます!」というプレゼンをしてくれました。それを聞いて改めて痛感したのは、「やる気」の大切さです。実際、営業成績を分析してみたら、過去の実績云々よりも、「やる気」のある人間の方が数字を上げていたのです。

われわれが扱うアドテクノロジーは新しい分野ですから、変化のスピードが速く、実績のある人を採用したとしても、過去の経験が足かせになることも多い。そのことに気づいてからはむしろシンプルに、年齢や経験とは関係なく、ジーニーが実現したい世界に本気で共感し、前のめりになってくれる人を採用するようになりました。

ピンチのときは協力意識も芽生えます。先の危機をきっかけに、営業とエンジニアが互いに協力し合う文化も生まれました。現在も、社内でそういうコラボチームがいくつか動いていますが、だいたい1カ月から3カ月で企画をローンチし、お客様に届けています。厳しいけれども、それを達成することで自分自身も成長できる。そういうコミットメントを大事にした組織文化を、1年半くらいかけて皆と作ってきました。

「文化」の次は「マネジメントの壁」

次にぶつかったのは「マネジメントの壁」でした。これはちょうど100人規模を超えたあたりにありました。年間2倍の成長を実現しようと思えば、間違ったことは翌月すぐに直すくらいのスピードが必要です。小さなPDCAをたくさん回すなかで、経営会議で話し合われている内容が現場にまで伝わらなくなる現象が起こりました。「自分の知らないところで何かが勝手に決められ、上がその方針をコロコロ変えている」と感じた社員も、多かったようです。原因は、経営層と現場をつなぐマネジメント層のコミュニケーションが不足していた点にありました。ジーニーが、他社に比べてコミュニケーションが特段薄いというわけではないと思いますが、これだけの速さで急拡大しているからこそ、普通の会社よりも経営と現場をつなぐ上での難しさがあり、気を使わなければいけなかったのです。

そこで、まずはマネジャー層に研修を行い、経営会議で決まった方針をチームに伝えると同時に、チーム内の意見を集約し、経営層に伝える中間地点的役割を負っていることを認識してもらいました。それまでは、どちらかというとマネジャーは業績を伸ばすことに専念しがちでしたので、「事業の成長にとって何が正しいのか」と同時に、「メンバーの幸せにとって何が正しいのか」という2つの軸を基準に考えるよう、促しました。

ジーニー自身、ものすごいスピードで急成長していますので、その時々の状況に合わせて方針を変えていかざるを得ない。それをその都度、全体で共有していくのは難しいことでしたが、上長とメンバーが1対1で話す時間を設けるなど、方針が全体にくまなく伝わるような仕組みを取り入れました。私自身、四半期に1度は役員と1対1の話し合いをするようになりました。

アリババの創業者、ジャック・マーは「人を見るときには複数人で見ろ」と言っています。人間にはどうしても得意・不得意がありますし、不得意でも「できるようになろう」と頑張っているマネジャーもいます。彼らが成長するのを待てればいいのですが、われわれのようなベンチャー企業の場合、待っていられない現実も一方であります。そのため、縦のラインに並ぶ人材を組み合わせながら、個々人の能力不足を補っています。

例えば、課長と部長がいる場合、一方が事業の創造やマネジメントに強いなら、もう一方は人のマネジメントに強い人を配置する。事業を作っていくことと人材のマネジメントは両方、同じように重要です。個人としての得意・不得意はあったとしても、組織全体としてはどちらか一方に偏らないよう気をつけています。また、人間が成長するには適切なフィードバックが必要ですから、360度評価も取り入れています。これらの取り組みを通じてマネジメントの壁は少しずつ緩和されてきたと感じています。

自分も組織も、日々アップデートしていく

現在、従業員数は連結で200人を超えました。目標としては2020年までに売上1000億円、従業員1000人規模を目指していまして、現在はちょうど、次の壁にぶつかっているところです。その壁というのは、一人ひとりがもう一段上の仕事をこなせるようになること。そのために、私が去年までやっていた仕事は今、本部長にできる限り任せるようにもしています。その上で、私自身は海外で事業を伸ばすための戦略を考えたり、次の事業を作り出すことに取りかかっています。

日々、苦戦しながらではありますが、若手を海外の役員に抜擢したり、プロダクトの責任者に抜擢したり、ということも始めています。外部の起業家と組みながら、実際のプロジェクトを通じて育てることもしています。育成に関しても、今後はなるべく仕組み化していきたい。今ある人事制度は創業3年目に作ったものなので、マネジメント層全体でコンセンサスをとりながら、リニューアルしていこうと思っています。

創業から6年。変化の激しい経営環境ゆえに、私自身も日々情報をアップデートしながら学んでいます。そのなかで、事業の成長にとって必要と判断すれば、自分の意見も即座に変えていきます。方針を唐突に変えているのではないことを少しでも分かってもらえたらと思い、外部の情報や刺激から得た学びや気づきなどは、社長週報を通じてマネジメント層と共有しています。事業拡大に負けないスピードで、従業員も私自身も成長し、組織が育っていくのが理想だと思っています。

【text:曲沼美恵】



※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.43 特集2「成長企業の組織・人材マネジメント」より抜粋・一部修正したものです。
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