効率よりも社員の自律性を優先するワークスアプリケーションズ 理念を浸透させて自律を促せば規律は最小限でいい

ソフトウェアの開発で知られるワークスアプリケーションズ。未知の市場を開拓し続ける組織風土でインターンシップ人気No.1、「働きがいのある会社」ランキングでも、常に上位に位置している。同社が取り組む「自律と規律」のバランスとは? ワークスアプリケーションズ ビジネス・サポート・インフラ部門 ゼネラルマネジャー小島豪洋氏にお話を伺った。


個人の「自律」を重視 組織の「規律」は経営が直接語る

ワークスアプリケーションズ(以下、ワークス)は1996年、牧野正幸氏、阿部孝司氏、石川芳郎氏の3人の代表によって設立された会社である。2015年6月現在、連結での売上高は365億円超、従業員数は3872名を数える。ここ数年、学生のインターンシップや「働きがいのある会社」ランキングでも上位に位置する常連だ。

そんなワークスの人事制度はユニークで組織風土も柔軟なことで知られている。人事・総務分野を総括する小島豪洋氏は言う。「これは私なりの解釈ですが、自律を自分のルールとすれば、規律とはチームや組織全体のルール。その定義に従えば、当社の場合は自律を重要視し、規律は最小限でいいという考え方です」

創業時より、ロジカル・シンキング(論理的思考力)とクリエイティブ・シンキング(発想転換力)を兼ね備えた、問題解決能力が高い人材を、同社ではクリティカルワーカーと呼び、特に重視してきた。彼らは、与えられることには満足しない。それよりむしろ、自由な環境で、自ら創り出すアイディアを実現することを望む。同社は、クリティカルワーカーが制限なく挑戦し、思う存分能力を発揮できる環境を提供し続けることを理念とする。

その理念を実現すべく、創業時から何より力を注いだのは、採用だ。初期段階では、代表陣自ら説明会に出向いて理念を語り、それに共感できる人材だけを選抜するよう心がけた。インターンシップで個々人の能力を見極め、優秀な学生に対しては複数年有効な「入社パス」を授与するなどもしている。3000人規模になった現在でも、理念への共感を最重要視する姿勢は変わってはいない。

「当社では当時も今も、代表陣が社員に向かって直接語りかける機会を多く設けています。その1つに、毎月、全社員が集まる『CLOWS(クロス)』がある。これは、会社のビジョンや価値観を全社員が共有するためのものであり、ワークスが目指す方向性や今後の戦略、そのために必要なリーダーシップとは何かなどを、代表陣が自らの言葉で話します」

加えて、入社したばかりの社員や配属されて間もない社員を対象にした「MY COMPANY講座」も実施している。ここでもやはり、代表陣が直接出てきて理念を語り、参加者との質疑応答によってその理解を深めていくことを主眼に置いている。

代表陣から社員に語りかける機会を多く設ける一方、社員からのフィードバックには業務報告書を使っている。これは全社員が月に1度あるいは週に1度、代表陣に出すもので、ユニークなのは会社や代表陣に対する愚痴であっても何を書くのも許されていることだ。代表陣は、個別の内容ではなく、チャレンジ精神を尊ぶなどの、全体として描いている理念や文化がズレていないかどうかを確認する。

具体的な行動指針は「Works Way」で示す

同社はまた、できるだけ階層を入れない方針でやってきた。むやみに力のない中間管理職を増やしても、無駄な制圧や規律が生まれて行動が制限され、個人の成長を阻害することになるからだ。その代わりとなるのが、理念を体現する行動指針である。同社の具体的な行動指針は、「Works Way」(図表1)にまとまっている。「他責NG」「なぜなぜ思考」「コンティンジェンシープラン」「ブレークスルー」「ヒューマンスキル」など、5つの指針がユニークな言葉で表現されている。例えば、「他責NG」とは他者や時間など与えられた環境や条件のせいにせず、その条件を前提に問題解決しようとする姿勢を指す。問題の「本質」「事実」「目的」を明らかにするため、徹底的に考え尽くすのが「なぜなぜ思考」だ。

「一方、企業理念や文化を実現するためにマネジャーはこうすべきという具体的な行動は、あえて言語化していません。理念を共有できていれば、そこはむしろ、言わなくても分かるだろうというスタンスです。理念や価値観を共有し、行動を縛らないことで仕事のスピードも速くなります」

個々人に思う存分能力を発揮してもらうため、業績と評価はあえて連動させていない。目標を定め、それに向かって挑戦する姿勢やプロセスを重視するものの、MBO(目標管理)はあくまで指導のツールとして使い、数値目標の達成度は評価に盛り込まない。

「評価に関しては基本、即時評価です。異動先で過去の評価をひきずることがないため、一度失敗しても、また新たにチャレンジできます。また、上司評価だけではなく多面評価をメインに据えているのも他社にはあまりない特徴かもしれません。日々のミーティングでもよく、『それって他責NGじゃない?』というような言葉が出てきます。社員同士が、お互いの行動が理念に合っているかどうかを確認し、評価し合う文化が浸透していると思います」

目先の業績にとらわれず面白い会社であり続けたい

クリティカルワーカーのように、自律し、挑戦し続ける人材が求めるのは、自由でワクワクするような「興奮するフィールド」だ。そういう意味で、小島氏は「最大の報酬は仕事だ」と語る。ワークスでいえば、世界初の人工知能型ERP「HUE」の開発などがそれにあたる。

「規律を重視して統制をとれば、業績はもっと上がるかもしれません。しかし、そんな会社にはしたくないと、代表陣は言います。目先の業績を良くすることよりも、面白い会社であり続けることの方が大事だというのが代表陣の考えです」

今春は1000人単位の新卒採用も予定しているという。今後さらに規模が拡大していってもなお、現在の組織風土を維持できるかどうかは大きなチャレンジだ。

「規律を求めて社員をルールで縛りすぎると、自律が弱くなって『他責』がはびこる会社になってしまいます。今後もできるだけ社員を縛らず、適度なゆるさをもって、ワークスらしい自律と規律のバランスを創出していきたい」

【text:曲沼 美恵】

※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.41特集1「大企業病にならない組織における自律と規律」より抜粋・一部修正したものである。

【企業概要】
■開業年:1996年 ■正社員数:3872名
1996年設立。世界初となる人工知能型ERP「HUE」の開発に成功し、大手向けシェアは5年連続No.1。2015年には他社に先駆け、マイナンバー管理プラットフォーム(MKS)を無償公開。また「アジア地域における働きがいのある会社」調査(Great Place to Work[R])では、アジア8カ国900社超のなかから「ベストカンパニー賞」を受賞。海外にも多数拠点を持つ。

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