大企業病にならない組織における自律と規律 風土改革によって社員の自律・自立を実現してきたテルモ

多くの企業が風土改革に取り組んでいるが、大きな成功例はあまり耳にしない。特に、社員の意識を変えることに苦労する企業が多いようだ。そこで、20年以上の風土改革によって、社員の自律・自立を実現してきたテルモが、何をどのように実践してきたのかを紹介したい。「大企業病にならない 組織における自律と規律」について、テルモ株式会社人材開発室長の前田浩司氏にお話を伺った。


「5つの壁」と企業体質の壁

テルモが風土改革を本格的に始めたのは、1995年だ。1990年代はじめ、3期連続の赤字を計上して、売上1000億円の壁、製品開発の壁、財務の壁、海外展開の壁、企業体質の壁の「5つの壁」を前に行き詰まっていた。そこで経営陣が、まず企業体質の壁、つまり「人と風土の問題」を解決しない限りは前に進めないと判断し、風土改革に踏み切ったのである。

社員を「アソシエイト」と呼び、主体性を求める

風土改革の出発点は、従業員、社員の呼び名を「アソシエイト」に変えたことだった。アソシエイトとは、単に仲間という意味ではなく、「一人ひとりが主役」であることを指す。人材開発室長の前田浩司氏が説明する。「各自が主体性をもって行動することを求めているのです。この言葉は20年以上経った今もしっかりと根付いており、風土改革を根底から支える象徴となっています」

1996年の創立75周年には「アソシエイト・スピリッツ」を制定。「有言実行キャンペーン」を行い、優秀者はクルーズ客船に招待した。有言実行キャンペーンとは、仕事でもプライベートでもよいから、自ら目標を定めて宣言し、チャレンジするというもので、実際に富士登山などの目標を立てた者もいたという。「チャレンジ精神を引き出すため、思い切った施策にしたのです。そして、一定のチャレンジ精神が根付いた5年後の有言実行キャンペーンでは、仕事の目標に限定。これまでの価値観にはない思い切った施策を実行することで、変革を実感できると思いました」

また、自発的なチャレンジを奨励する施策として、毎月のように社内人材公募を行っている。海外子会社の社長が公募で選ばれるなど、これまでに150名ほどの異動が実現した。

信賞必罰、異分野を知る 個人からチーム力へ

以来、同社は組織のステージに合わせて、さまざまな施策を実行してきた。「2000年からは『信賞必罰』がテーマ。降級・降格があり得る脱年功序列・実力重視の等級制度導入の一方で、優れた仕事を称える『現場の誇り賞』を始めました。これは、縁の下の力持ちとして真摯に取り組み、そのスキル、匠の技、知恵、志でテルモに貢献している現場のアソシエイトを表彰するものです」

2002年からは、開発・生産・営業といった機能別の縦割り意識を壊すために、横串を通す組織「TBU(テルモビジネスユニット)」がスタートした。1つのビジネスを一気通貫で運営することで、ビジネスのスピードが加速。職種を超えたローテーションも行い、事業軸での人材育成が進んだ。

経営幹部の360 度アンケートを社内に公開

2010年からは、「ダイバーシティ変革」に注力している。具体的には、(1)テルモグローバルビジョンの制定、(2)自由闊達な風土を醸成するため役職ではなく「さん」づけで呼ぶことを奨励、(3)オフィスのフリーアドレス化といったさまざまな仕掛けを積み重ねている。

「なかでも重視しているのは、『上から変わる』ことです。例えば、会長・社長をはじめ経営幹部全員の360度アンケートをイントラネットで毎年社内に公開しています。フリーコメントも掲載され、厳しい言葉が並んでいる者などもおり、刺激を受けた経営幹部が多いようです」

また、2011年からは管理職を対象としたレビューシステムを新たに導入した。管理職を任期制にして、定期的に任期中の貢献度を確認し、処遇の見極めをより厳しく行うようにしたのである。その結果、やむを得ず降格するケースもあるが、突然降格になることはなく、本人には事前に通知を行い、気づきと改善の機会が提供された上で見極められていくという。

さまざまな仕掛けの積み重ねで自律・自立の風土へ

改革開始から20年以上が経つ。「グローバルに活躍できる人材や、現場の組織力を高めるミドルマネジャーの育成など、課題はまだまだありますし、指示待ち体質も完全にはなくなっていませんが、1990年代前半と比べれば明らかに風土が変わりました」。また業績面でも拡大を続け、2015年3月期の売上高は4895億円を計上。「計算することはできないものの、自律・自立の風土改革は、売上・利益の向上に貢献していると確信しています」

今後は、グローバル人材育成や国内外で事業を推進するリーダー育成などをさらに加速していく予定だ。そのなかで、研修にも自発的にチャレンジする仕掛けを取り入れ、キャリア形成においても自ら考え、行動することを奨励していく。

「風土改革に終わりはありません。改革を続けることが最も大切です。これからも、自律・自立した風土に向けて、さまざまな仕掛けを積み重ねていきたいと思っています」

【text:米川 青馬】

※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.41特集1「大企業病にならない組織における自律と規律」より抜粋・一部修正したものである。


【企業概要】

■開業年:1921年 ■正社員数:4930名(テルモグループ:20198名/2015年9月末現在)
北里柴三郎博士をはじめとする医学者らが発起人となり、優秀な体温計の国産化を目指して設立。使い切り注射針、血液バッグを日本で初めて発売するなど、長らく業界をリードしてきた。現在は心臓血管カンパニー、ホスピタルカンパニー、血液システムカンパニーの3事業領域で医療の革新に挑戦している。

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